美術の先生が貸してくださった船越保武のエッセイ集「大きな時
計」を読み終えました。
特に心に残ったのは、「生命の灯り」と「身売り」。
「生命の灯り」は、友人の外科医に頼まれて犬の脚の関節を内視
鏡で覗いて色鉛筆で忠実に写生した時の感動を書いています。
彼がそこに見たものは、言いようのない鮮やかな色の美しい光の展開、
光の音楽でした。
「美しい明るい光の流動を見ながら、私は生命の
灯りの中に入り込んだのだと感動した」と書いています。
犬の関節の中にあった美しい光の音楽は、私の中にもあるのだと
思うとなんだかうれしくなりました。
被造物はみな、そのように美しいものを秘めているのだと思うと
神様に感謝しないではいられません。
私たちは一人ひとり大切に美しく作られているのですね。
「身売り」は、大気汚染や宇宙のゴミ問題に危機感を抱いて書かれた
一文です。
30年近く前に書かれたものですが、現在にもそのまま通じる・・・と
思いました。
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汚したものは、後を片付けて元通りにしなければならない。当
然のことなのだ。
「出来ることが解った」その時点で、じっくりと、副作用を考
える責任があるはずだ。・・・・・・回収の責任はとらないで、知
らぬ顔の半兵衛さんはいけない。
「そこまでは研究していませんでした」というのか。
「すみませんでした」で済むことではない。
科学者が、一つのことに研究を集中して、あとのことは考えてい
ないとしたら、近視も度が過ぎるというものだ。
自滅の研究ではないか。
私は目の前が真暗になるような、破滅の予感が日ましにつのる
ばかりだ。
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優れた芸術家の魂は、真直ぐに真実をつかむのだと感じました。
福島第1が爆発した3.11後の世界は、
「身売り」の事実を明らかにしたと言えるのかもしれません。