見られなかった「いすみ市郷土資料館」の熊野神社神輿が
年明けから展示されているというので見に出かけました。
せっかくなので、いすみ市近辺でまだ未見の伊八の彫刻がある
光福寺にも立ち寄ることにしました。
まずは光福寺です。
が、例によって小さな集落でナビの「目的地周辺です」の声。
ナビを見ると道路から数十メートル右側にゴールが・・・。
右を見るとコンクリートの土留めの上に森が鬱蒼と茂ってます。
どうやらこの坂を登るようです。

坂を上りきったところに風情のある楼門がありました。

どうやら仁王門のようです。
普通の仁王門と違って、仁王様の前に祈祷するスペースがあります。
さらに不思議なことに紙垂(しで)を垂らしたしめ縄が。。。
仁王門の向うにもう一つ新しい門があります。

この光福寺は真言宗ということですが、飯綱寺もそうでしたが
山岳密教に近い、神仏習合のお寺だったのかもしれませんね。
その風習が残っているということでしょうか?
仁王門、新しい門を潜った正面に立派な本堂がありました。
軒の張り出しが大きい、美しい姿です。
この本堂にもしめ縄があり、鈴(れい)があります。

鈴(れい)は密教の法具にもありますから、
やはり密教と関係が深いのでしょうね。
本堂(文化財)のひだりには解説板があります。

どうやら向拝虹梁の龍が波の伊八の作のようです。
\どん/

クリックすると大きな写真が見られます。
裏には「武志伊八郎信由作」の名が刻まれています。

しかし解説にはありませんが、この向拝の木鼻も伊八の作だと思います。

クリックすると大きな写真が見られます。
右下の波の透かし彫りに跳ねる鯉など伊八の特徴そのものですが、
なによりも真ん中の獅子が珍しい。
微妙に斜めに向いているのがわかりますでしょうか。
さらに前足が前後して、今にも飛びかかりそうです。
この躍動感こそが、宮彫師の様式美に留まらなかった伊八ならではの作風です。
続いては田園の美術館「いすみ市郷土資料館」です。

ここは田園の美術館と言われるように、郷土資料館ではなく
多くの美術品を所有する小さな美術館です。
展示スペースは10畳ほどの小展示室と20畳ほどの大展示室だけですが、
狩野派の始祖、狩野正信の生誕地の側(はす向かい)に建つだけあり、
地元の寺社や名士などから寄贈、あるいは保管を委託された
美術品が多数あり、それらを無料で見学できる素晴しい場所なのです。
この日は狩野派の花鳥画作品を中心とした展示をこなっていましたが、
大展示室の入り口脇に目的の熊野神社神輿が展示されていました。

解説によるとこの神輿の正面戸脇と残りの三面の彫刻が
初代伊八の作だとか。私の調べた所では、この神輿が完成したのが、
伊八が亡くなる4ヶ月前ですので、まさに遺作です。

まずは正面戸脇の彫刻から。\どんっ!/

神輿自体、小さな神輿ですので、この戸の高さがせいぜい一尺(約30cm)。
ここまで小さな作品は初めて見ますが、緻密さが凄いです。
左面の波と龍。\どんっ!/

右面の波と龍。\どんっ!/

金箔の状態も比較的良く、龍がうねっているようです。
さらに背面お意匠が私も初めて見るものです。
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鳳凰でもないし、やはり飛竜と言うことになるのでしょうか?
対角線の構図が得意な伊八らしい作品です。
最後に別の角度から神輿の全景を。

この美術館、とても良いので時々来たいのですが、
なにせ不便なところにあるんですよねぇ。
いすみの人はある意味、本当に贅沢なのかもしれませんね。
最後まで読んでくださったあなたに、全ての良き事が雪崩のごとく起きます。
