高崎映画祭で
『名前』
という作品を観賞してきました。
上映後の舞台挨拶で
SNSでの拡散
よろしくお願いします、
とお願いされました。
素晴らしい作品だったので
敬意を払い
ブログにアップしたいと思います。
あらすじやキャストは
公式ホームページの
リンクを貼りますので
割愛させて戴きます、
こちらを御覧下さい。
『嘘』というものはデタラメなので
真実ではないと考える人もいますが、
それは浅い解釈だと思います。
例えば、
小説やドラマで
刑事や探偵が嘘を見破り、
「彼はなぜ嘘をついたのか」
とその嘘を追及していくと
真相に辿り着く。
最初はわからなかった真実が
嘘を糸口にして見えてくるわけです。
嘘は真実から生み出されるのです。
我々の住む世界には
様々な嘘が存在します。
嘘は現実に存在し
嘘も現実の一部だといえるでしょう。
だとすれば、
嘘は世界の構成要素であり
嘘がなければ真実の世界とは言えない、
嘘も真実の一部だということになります。
嘘と真は
表裏一体なのです。
この作品の原案は
直木賞も受賞している
ミステリー作家の
道尾秀介氏が手掛けています。
本作も偽名を使う主人公の
偽りの人生から始まり、
その嘘の真相が
しだいに明らかになっていきます。
しかし、
二人の主人公の素性がわかったからといって
見るのをやめないで下さい。
ミステリーは謎が解けたら終わり、
ではありません。
二人の素性が明らかになる場面は
まだ序章に過ぎません、
本編はそこからです。
この作品の二人の主人公もまた
表裏一体の存在でり、
二人の人生が交差するとき
初めてこの
『名前』
という作品の
全体像が浮かび上がってくるのです。
偽りの名前 と 現実の自分
女優としての演技 と 自らの本心
二面性を持つ主人公たちは
その二面性に自分を見失います。
表と裏、
どちらか一方から見ていたのでは
極めて重要なことを見落としてしまいます。
表と裏にこだわってしまうと
コインそのもの見落としてしまう。
木を見て森を見ずでは
真実はわからりません、
表と裏を別々に見ている限りは
一部分しか見えていないのです。
表と裏、
二つの視点から見ることで初めて
平面ではなく
奥行きをもった立体として
自分自身を捉えることができる。
表面的には見えなかった
心の奥底がようやく見えてくる。
嘘の自分 と 本当の自分
二人の自分が重なり合った時、
正男と笑子
二人の主人公は何を思うのか。
そして二人の人生が重なり合った時
正男と笑子はお互いとどう向き合うのか。
このミステリーは
謎が解けた後からが面白い。
そして
もう一つの見所は
俳優さんの演技です。
前述したように
高崎映画祭で上映された作品なのですが、
監督たちの現在(いま)と題し
進取果敢な若手監督作品特集として
上映された作品の一つです。
上映後に
主演の津田寛治さんと
美術部顧問役の松林慎司さんによる
舞台挨拶があったのですが、
監督の 戸田 彬弘 氏は
非常にアドリブを多く取り入れる監督だと
語っていました。
作中では非常に長い台詞が
実は台本では二行しかなかったとか、
撮影場所を直前に変更することも
しばしばあったとか。
そうしたアドリブが成立したのは
役作りを徹底的に行っていたからで、
津田さんはもう一人の主演である
駒井 蓮さんを
「映画出演がそれまでほとんどなかったのですが、女子高生の彼女がキャピキャピした学園物みたいにならなかったのは、監督とのコミュニケーションを綿密に取り合っていたからだ」
と高く評価していました。
料理の世界では、
フレンチは足し算の料理
和食は引き算の料理
といわれます。
フランス料理は
いろいろは食材の旨味プラスしていく
とても濃厚な味付けですが、
和食は食材の良さを
どこまで引き出せるかが
板前の腕の見せ所で、
あっさりしているので
和食はシンプルな料理と
思われることもありますが、
下処理に大変手間隙をかけている料理も
数多く存在します。
戸田 彬弘 監督は
俳優の持ち味を引き出すことに
とても力を入れている、
和食の板前タイプの監督のようです。
自分は駒井 蓮 さん、
以前から存じていたのですが
とても頭のいい女優さんです。
津田 寛治 さんと 駒井 蓮 さん、
お二人が演じる主人公たちの人物像。
ここがこの作品の注目ポイントです。
まあ自分は、
他人の評価なんか宛にしないで
自分の目で評価しろという考えです。
あえて星いくつとかいう評価はしませんが、
私が感じた見所は
二人の主人公たちの心情の変化と
それを表現する二人の俳優の演技。
この二つですね。
映画の楽しみ方なんて人それぞれなので
どこに注目しても良いのですが、
裏と表、二つの方向から見ることで
コインが立体的に見えるように、
他の人間の見方と自分の見方
比較することで
この作品の奥深さを
実感できるのではないかと思います。
映画『名前』
興味のある方は
チェックしてみて下さい。
因みにこの映画の上映が行われたのが
平成31年4月1日10時から。
ちょうど新元号が発表された時間に
上映されていたんですね。
その後の舞台挨拶で津田さんから
「皆さんまだ新元号を知らないので、私から発表させて頂きます」
とのお言葉が。
そして掲げられた紙に書かれていた
漢字二文字は、
名
前
「どうしてもやってくれって頼まれて、」
と津田さん、
仕切りに弁明しておりました。
津田さんは悪くありませんね
新元号を4月1日に発表したりするのが悪い。
(^_^)