昭和20年(1945)3月に始まる沖縄戦。

日本海軍は、残された戦力の全てを投入し、沖縄に迫るアメリカ軍に打撃を与える「天一号作戦」を発令。

そして、その中で、航空戦力による攻撃を「菊水作戦」と名付けます。

以下、この本と、個人的な考えから。

 

 

さて、「菊水作戦」とは、沖縄方面で行われた航空作戦「天一号作戦」において行われた海軍の特攻作戦のこと。

個人的に、この「特攻作戦」は、ほぼ、効果は無かったものと思っていたのですが、実際は、そうではなかったようです。

 

昭和20年(1945)3月22日、野中五郎少佐の「神雷桜花特別攻撃隊」の一式陸上攻撃機18機が、特攻機「桜花」を装備して出撃。しかし、全機、撃墜される。

 

これが「桜花」で、爆弾に、翼と操縦席を付けたようなもの。

 

このように、一式陸上攻撃機の下部に装着され、敵に接近し、切り離されて、エンジンを噴射し、敵艦に突入します。

 

3月26日、「天一号作戦」が、発令される。

4月1日、アメリカ軍が、沖縄本島に上陸を開始。

陸軍の第六航空軍、台湾の第八航空師団が、連合艦隊の指揮下に入る。

 

4月1日から3日にかけて、133機の特攻機が出撃。

輸送艦1隻を撃沈。重巡洋艦「インディアナポリス」と、空母2隻に損傷を与える。

 

4月5日、戦艦大和を中心とした第二艦隊第一遊撃部隊に、海上特攻を命じる。

 

4月6日、「菊水作戦」が、実施される。

 

「菊水一号作戦」

 

4月6日、海軍機215機、陸軍機82機が出撃。

戦車揚陸艦1隻を撃沈。

 

4月6日、戦艦大和の第二艦隊が、徳山沖を出撃。

4月7日、坊の岬沖海戦で、戦艦大和、沈没。

この時、第二艦隊に向けて攻撃機を発進した空母「ハンコック」に、「建武隊」の零戦一機が命中し、大破。

 

特攻機が命中し、炎上する空母「ハンコック」。

 

4月11日、戦艦「ミズーリ」、空母「エセックス」「エンタープライズ」に、特攻機が命中し、損傷。

 

戦艦「ミズーリ」に、突入する零戦。

操縦桿を握っているのは、石野節雄二等兵曹、または、石井兼吉二等兵曹と思われる。

 

この菊水一号作戦では、特攻機355機が出撃し、6隻を撃沈、37隻に損傷を与える。

 

「菊水二号作戦」

 

4月12日、海軍機103機、陸軍機72機が出撃。

上陸支援艇1隻を撃沈。レーダーピケット艦「カッシン・ヤング」「パーディ」、駆逐艦「ゼラース」を大破。戦艦「テネシー」に99式艦爆が命中し、大破。

 

同日、桜花を搭載した一式陸上攻撃機8機が出撃。

土肥三郎中尉の桜花が、駆逐艦「マナート・L・エベール」に命中し、撃沈。

駆逐艦「ジェファーズ」「スタンリー」が大破。

 

4月13日以降、小規模な特攻により、戦艦「ニューヨーク」が、損傷。

 

菊水二号作戦では、2隻を撃沈、22隻に損傷を与える。

特攻機185機が、失われる。

 

「菊水三号作戦」

 

4月16日から17日、海軍機176機、陸軍機52機が出撃。

レーダーピケット艦「プリングル」を撃沈。駆逐艦「ブライアント」「ボワーズ」「ハーディング」「ラフィー」に損傷を与える。

 

菊水三号作戦では、1隻を撃沈、14隻に損傷を与える。特攻機165機を失う。

 

「菊水四号作戦」

 

4月20日から22日にかけて、海軍機26機が出撃。

4月27日から30日にかけて、特攻機100機が出撃。59機が、未帰還。

掃海艦「スワロー」、上陸支援艇1隻、弾薬輸送艦1隻を撃沈。駆逐艦「ヘールズウッド」「ハッガード」「ベニオン」が損傷。病院船1隻が、損傷。

 

菊水四号作戦では、3隻を撃沈、20隻に損傷を与える。

特攻機105機が、失われる。

 

「菊水五号作戦」

 

5月1日から4日にかけて、160機が出撃。

5月3日、駆逐艦「リトル」、揚陸艦1隻を撃沈。掃海駆逐艦「アーロン・ワード」が損傷。

5月4日、軽巡洋艦「バーミングハム」が、大破。空母「サンガモン」が、大破。駆逐艦「ルース」「モリソン」を、撃沈。

 

空母「サンガモン」に突入、目前の三式戦闘機「飛燕」。

 

同日、4機の桜花のうち、一機が、駆逐艦「シェイ」に命中し、大破させる。

5月9日、イギリス軍の空母「インドミダブル」「ビクトリアス」「フォーミダブル」が、損傷。

 

菊水五号作戦では、7隻を撃沈、25隻に損傷を与える。

特攻機125機が、失われる。

 

「菊水六号作戦」

 

5月8日から15日にかけて海軍機133機、陸軍機35機が出撃。

安則盛三中尉の零戦が、空母「バンカーヒル」に命中。続いて、小川清少尉の零戦が命中する。

 

空母「バンカーヒル」に迫る、安則中尉、小川少尉の零戦。

 

5月12日、陸軍の疾風が、戦艦「ニューメキシコ」に命中、大破させる。

5月14日、零戦26機が出撃。富安俊助中尉の零戦が空母「エンタープライズ」に命中、大破させる。

 

宙返りをしながら、空母「エンタープライズ」に突入、目前の、富安中尉の零戦。

 

菊水六号作戦では、19隻に損害を与える。

特攻機150機が、失われる。

 

「菊水七号作戦」

 

5月23日から27日にかけて、海軍機107機、陸軍機61機が出撃。

駆逐艦「ベイツ」、揚陸艦1隻を撃沈。駆逐艦「バトラー」「ローパー・フォレスト」、掃海艦1隻、駆潜艇1隻が、大破。

 

菊水七号作戦では、2隻を撃沈。21隻に損傷を与える。

特攻機135機を失う。

 

「菊水八号作戦」

 

5月26日から28日にかけて、海軍機51機、陸軍機57機が、出撃。

5月28日、練習機「白菊」が、駆逐艦「ドレクスラー」に命中し、撃沈。

5月29日、練習機「白菊」が、駆逐艦「シュブリック」に命中し、大破させる。

 

菊水八号作戦では、1隻を撃沈。8隻に損傷を与える。

特攻機110機を失う。

 

「菊水九号作戦」

 

6月1日から6月7日にかけて、海軍機23機、陸軍機31機が出撃。

6月5日、重巡洋艦「ルイビル」が、大破。

6月10日、空母「ナトマベイ」が、損傷。駆逐艦「ウイリアム・D・ポーター」を撃沈。

 

菊水九号作戦では、1隻を撃沈、10隻に損傷を与える。

特攻機75機を失う。

 

「菊水十号作戦」

 

6月16日から22日にかけて、海軍機67機が出撃し、28機が未帰還。

駆逐艦「トゥイッグス」に、艦爆「彗星」が命中し、沈没させる。

 

菊水十号作戦では、3隻を撃沈し、7隻に損傷を与える。

特攻機45機を失う。

 

6月23日、第32軍司令官の牛島満中将が自決し、沖縄本島での日本軍の組織的戦闘は、終わる。

 

7月29日、93式中間練習機「赤とんぼ」が、駆逐艦「キャラハン」を撃沈。

これが、特攻によるアメリカ軍艦艇の最後の撃沈となる。

 

練習機「赤とんぼ」です。このような飛行機も、「特攻」に用いられた。

 

このように、「特攻」という作戦は、かなりの戦果を挙げていた。

これまで、個人的に、勝手に、戦果は無いものと思い込んでいた、人間爆弾「桜花」や、練習機「白菊」、そして練習機「赤とんぼ」といった、とても、性能の低い航空機でも、「特攻」による戦果を挙げている。

 

菊水作戦での戦死者は、海軍2045名、陸軍1022名。

アメリカ軍の戦死者は、4907名。

戦死者の数では、日本軍よりも、アメリカ軍の方が、多かった。

他に、イギリス軍、オランダ軍にも、数百名の死傷者が出る。

 

特攻には、海軍機940機、陸軍機887機が参加。

そのうち、103機が命中し、122機が、至近弾となる。

アメリカ軍艦艇36隻を撃沈し、368隻に、損害を与える。

 

実は、第二次世界大戦におけるアメリカ軍艦艇の喪失の「7分の1」は、沖縄周辺海域であり、その8割が、菊水作戦によるもの。

 

この「特攻」という作戦は、アメリカ軍に、甚大な被害と、恐怖を与えていた。

そして、大本営は、この「特攻」を作戦の中心として、アメリカ軍に対抗する決断をする。

 

大量の「特攻機」による波状攻撃は、恐らく、想定以上の戦果を挙げ、また、アメリカ軍は、甚大な被害を受けると同時に、アメリカ軍兵士に、精神的な恐怖を与えていた。

 

しかし、この「特攻」という作戦が、人間を「使い捨て」にした、非人道的なものだったことは、間違いない。

他に、手段は、無かったのか。

 

神風特別攻撃隊の写真集を所有していますが、やはり、見ていると悲しい。

写っている特攻機には、操縦桿を握っている人が居て、その直後には、確実に、命を落としている。

一体、その瞬間、どんな気持ちでいたのか。