先日、作家の酒見賢一さんが亡くなったという記事を見ました。

酒見賢一さんと言えば、やはり、小説「墨攻」が有名ですよね。

 

 

この「墨攻」は、漫画にもなり、映画にもなっていますよね。

かなり、話題になったということでしょう。

 

 

さて、物語。

主人公は、墨家教団に所属をする「革離」という人物。

この革離が、「趙」という国の大軍によって攻められている「梁」という国の城に入る。

革離は、智謀を駆使して、趙の大軍を迎え撃つことになる。

たった一人で、城を守り、城兵を率いて、奮闘をする革離でしたが、最終的に、裏切りに遭い、殺されるのではなかったですかね。

 

さて、この小説のタイトル「墨攻」とは、慣用句にある「墨守」からヒントを得たものでしょう。

この「墨守」とは、「かたくなに、守る」という意味。

とにかく、「頑固に、守り抜く」というイメージがある言葉。

なぜ、このような言葉が生まれたのか。

それは、この小説の主人公、革離の行動から分かる。

そして、革離の行動を理解するためには、「墨子」の思想を理解することが必要です。

 

この「墨子」という思想を生み出した墨翟という人物が、どういう人なのか、実像は、分からないということのようですが、とにかく、他の諸子百家の本とは違い、読んでいて、とても、面白い。

個人的には、諸子百家の本の中で、「読み物」として、最も、面白い本でした。

華美よりも実利を重視する思想で、儒教の教えを、厳しく、批判している。

そして、「非攻兼愛」が、「墨子」の特徴。

 

「非攻」とは、「戦争反対」、つまり、「平和主義」ということになる。

「兼愛」とは、「全ての人を、平等に愛せよ」という思想。

 

 

 

 

古代中国の戦国時代に、「墨子」は、こういう、一見、無茶な思想を押し出し、活動をした人。

この「墨子」の思想は、ただ、唱えているだけでは駄目で、「墨子」の思想に共感し、「墨家教団」に所属をしている人たちは、実際に行動をすることが求められることになる。

 

この「墨家」の人たちは、黒い衣服に身を包み、行動をしていたそうですね。

一種、異様な感じだったよう。

そして、どこかで戦争が起きそうだという話を聞くと、そこに行き、「戦争を止めるように」と、説得をして回る。

ここまでは、普通にあり得る話でしょう。

 

そして、この「墨家」集団の異様さは、ここから。

 

十分に説得をして、「この戦争は、回避出来ない」と判断をすると「墨家」の人たちは、「弱い方」の味方をして、実際に、戦争に参加をすることになる。

これは、物語に登場する主人公の革離の行動が、まさに、それ。

そして、この「墨家」集団は、いざ、戦争に参加をすると、「逃げる」ことは許されない。

まさに、「死ぬまで」「弱者」のために戦い続けたということ。

 

この「墨家」集団は、こういった過激な行動のためか、後世に続かず、滅びてしまったよう。

 

今、もし、この「墨家」集団が存在していたとしたら、世界で、どのような行動を取ったでしょうね。