小日向まるこさんの漫画「塀の中の美容室」。
原作は、桜井美奈さんの小説のようです。
女子刑務所の中に、一般の人を相手に髪を切る美容室があります。
それは、美容師の資格を取った受刑者に、お客さんの髪を切る経験をさせるためということのよう。
それは、社会復帰のための準備という面もある。
美容師の仕事は、刑務所の中の刑務作業の一環という扱いだそうです。
ネットで調べてみると、実際に、こういう美容室があるそうですね。
全国には、美容院は、岐阜県の笠松刑務所、栃木刑務所、和歌山刑務所。
男性が利用することが出来る理容室は、函館刑務所、川越少年刑務所にあるそうです。
美容師の資格を取るためには、短くても2年がかかるそう。
当然、それ以上の刑期の受刑者が、対象となる。
この漫画の主人公、小松原葉留もまた、殺人未遂という罪で服役をしている。
葉留が、刑務所で、美容師の資格を取ったのは、自分の実家が、美容院で、自分もまた、当初は、美容師になるつもりだったから。
しかし、ある出来事をきっかけに、人生が狂ってしまった。
そして、殺人未遂事件を起し、服役。
この、刑務所の中の美容院で、葉留に髪を切ってもらいに来る女性たち。
彼女たちもまた、それぞれに事情を抱えていた。
そして、この美容室での触れ合いで、互いに、心を癒して行く。
一話、読み切りで、連作になっている。
とても良い漫画なので、もう少し、エピソードがあっても良いと思うのですが、これは、原作との関係なのでしょうか。
それとも、掲載誌の事情でしょうかね。
さて、最初のエピソードに登場するのは、芦原志穂という雑誌記者。
仕事に追われ、恋人との関係も上手く行かず、思うような記事も書かせてもらえない。
そして、上司から「刑務所の中にある美容院の取材に行け」と指示をされる。
これが、この物語の始まりです。
志穂は、美容院で髪を切ってもらう訳なのですが、恋人に別れを告げられ、付き合っている間に延びた分の髪を切ることになる。
この「失恋によって、髪を切る」というのは、よく耳にする話ですよね。
なぜ、「失恋」が「髪を切る」ことに結びつくのか。
それは、「髪」には「記憶が宿る」という言い伝えが、影響をしているという話のようですね。
つまり、「失恋」によって「髪を切る」のは、元恋人への思い、記憶を、自分の中から消し去ろうという決意の表れ、と、言うことになるのでしょう。
今、町の散髪屋も、次第に、数を減らしているようですね。
格安の散髪屋、チェーン店のような散髪屋が増え、心の触れ合いは、減って来ているのかも。