小林一茶の俳句。

他の人の俳句と違って、独特ですよね。

シンプルで、ストレートで、分かり易い。

得てして、この「分かり易い」というのは、文学の中では、芸術としての評価が低い傾向がありますよね。

しかし、小林一茶の俳句は、そうではない。

なぜ、でしょう。

 

 

小林一茶の俳句は、誰が見ても、素直に楽しめますよね。

少なくとも、僕は、そう思います。

 

 

小林一茶に興味を持ち、この本を読んでみたところ、小林一茶という人が、かなり、特殊な人生を歩んだ人だということを知り、ますます、関心を持ったところ。

 

小林一茶は、信濃国の農家に生まれますが、幼くして、母親を亡くしてしまいます。

その後、父は、再婚をするのですが、この継母は、一茶のことを嫌い、一茶は、長男でありながら、15歳の時に、江戸に奉公に出されることになる。

もっとも、この江戸に奉公に出たことが、一茶と俳句を結びつけることにもなったよう。

そして、39歳の時に、父が亡くなりますが、遺産相続を巡って、継母、そして、異母弟と、長期に渡り、激しく、争うことになる。

そして、52歳の時に、初めて、結婚。

しかし、この妻との間の子供は、全て、幼くして亡くなり、妻もまた、亡くなってしまう。

再婚相手との結婚は、上手く行かず、64歳の時に、三度目の結婚。

65歳で、亡くなる直前には、火事で自宅が焼失。

 

まさに、身内に関しては、不幸の連続ですよね。

 

 

この本には、一茶が父を亡くした前後の状況を記した「父の終焉日記」が、収録されています。

父の病状に、一茶の看病。

そして、継母、異母弟との確執が記されていて、かなり、重い内容。

 

そして、一茶の代表作である「おらが春」。

 

この「おらが春」は、一茶が57歳の時の、様々な出来事と、それに合わせた俳句を記したもの。

この時に、一茶には、長女が生まれ、間もなく、亡くなっている。

実は、この「おらが春」は、一茶の死後、25年もたってから出版をされたものだそう。

また、一部、一茶自身が脚色をした部分もあるようで、当初から、出版目的の作品として書かれたものだろうということ。

 

「目出度さもちう位也おらが春」

 

本のタイトルは、この俳句から取られたもの。

個人的に、一茶の俳句の中でも、好きな句の一つです。

 

ちなみに、この本は、現代語訳ではありません。

なかなか、読みづらいですが、面白いです。