夢枕獏さんの小説に「上弦の月を喰べる獅子」というものがあります。
とても不思議な小説であり、とても面白い。
第10回、日本SF大賞、第21回、星雲賞日本長編賞を受賞しているということ。
主人公の三島は「螺旋収集家」ということ。
その名の通り、この世に存在する「螺旋」に興味を持つ人物。
そして、もう一人、登場をするのが「宮沢賢治」です。
主人公の三島と、宮沢賢治。
二人は、「螺旋」を通じて、不思議な世界、幻想的な世界へと入り込むことに。
僕は、この小説で、宮沢賢治の詩集「春と修羅」の「序」を知り、宮沢賢治に興味を持つきっかけになりました。
とても、独特、特徴的で、面白い文章。
大好きな文章の、一つ。
わたくしといふ現象は
仮定された有機交流電灯の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといつしょに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です
(ひかりはたもち その電燈は失はれ)
これらは二十二箇月の
過去と感ずる方角から
紙と鉱質インクをつらね
(すべてわたくしと明滅し
みんなが同時に感ずるもの)
ここまでたもちつづけられた
かげとひかりのひとくさりづつ
そのとほりの心象スケッチです
……
ウィキペディアを見ると、この小説には、仏教思想とヒンドゥー教的宇宙観が挿入されているということ。
もっとも、僕が読んだ時に、そのようなことを理解出来た訳ではないですが、とても、面白い本でした。