トキワ荘で生活をしていた漫画家の人たちが、当時を振り返った本は、色々と、あります。

その中で、石ノ森章太郎さんが、当時のことを振り返ったのが、この本。

 

 

実は、この本は、漫画ではありません。

石ノ森さんの文章と、イラストで、構成された本。

 

なぜ、漫画ではないのか。

それには、やはり、「お姉さんの死」というものが、関係をしているよう。

石ノ森さんにとって、お姉さんは、特別な存在で、そのお姉さんの死を、漫画で描くということは、どうしても、出来なかったということのよう。

 

また、漫画ではなく、文章によって書かれていることで、石ノ森さんの「心の中」も、詳しく、描写をされている。

そこには、意外な、石ノ森さんの姿がありました。

 

藤子不二雄さん、赤塚不二夫さんがトキワ荘に住んでいた時代を回想した物語に出て来る石ノ森さんは、まさに「天才」漫画家で、常人には真似の出来ない速さで、膨大な量の漫画を次々と描きこなし、更に、音楽、映画などの趣味にも没頭し、物事にこだわらない豪快な性格。

まさに、「パワフル」な人間として描かれている。

 

しかし、この本の中で、自身によって書かれた「石ノ森章太郎」は、まさに、別人です。

繊細な性格で、人に気を遣い、常に、何かに悩んでいる。

石ノ森さんが、上京をして、最初に住んでいたのはトキワ荘ではなく、別の家で下宿をしていたのですが、なかなか、家に人に、ものが言えず、健康を害するまでになってしまったので、心配をした寺田さんが、トキワ荘に来るように誘ったよう。

 

元々、石ノ森さんは、漫画家になりたかった訳ではなかったそうですね。

ベートーベンに憧れ、SF小説も大好きで、漫画家よりも、小説家になりたかったとか。

また、新聞記者になりたいという夢もあったそうですね。

 

そもそも、漫画を描いていたのは、大学を出て、新聞記者になるための学費を稼ぐという意図があったよう。

そもそも、漫画家という職業を、それほど、長く続ける気持ちも無かったそうです。

 

そのため、漫画を描き続けているということに、石ノ森さんは、疑問を持ち続けていたそう。

これは、本当に、自分のやりたいことから「逃げている」のではいか。

そういう気持ちが、トキワ荘時代の、石ノ森さんの中には、あったよう。

 

しかし、石ノ森さんは、「漫画を描く」ということについて、まさに、類稀な才能を持った人。

漫画を描くということから離れることは出来ず、ついに、覚悟を決めて、漫画家の仕事に取り組むようになる。

 

さて、トキワ荘に関しては、もう一つ。

 

 

この本は、手塚治虫さん、寺田ヒロオさんを始め、トキワ荘で生活をしていた漫画家の人たちが、それぞれ、当時の様子を、短い漫画で振り返ったもの。

様々な人の漫画が読めて、面白いです。