『チェンソーマン』を手がけた制作会社MAPPAは、現在のアニメ業界の中でも非常に特殊かつ野心的な挑戦をしており、他とは少し状況が異なります。
しかし、それでも「中国との関係悪化」の影響をゼロにすることはできません。具体的にどう「大丈夫」で、何が「リスク」なのかを分析します。
1. 資金面:業界でも稀な「100%自社出資」
『チェンソーマン』の最大の特徴は、多くの会社がお金を出し合う「製作委員会方式」を取らず、MAPPAが100%自社で制作費を出資している点です。
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強み: 中国資本の出資を受けていないため、もし日中関係が悪化して中国企業との提携が解消されても、「資金が止まって企画が消える」というリスクは他のアニメより低いです。また、配信権の販売なども自社でコントロールできるため、経営的な自立性が高いです。
2. 制作現場:MAPPAの「脱・下請け」戦略
MAPPAは、業界の構造的弱点(海外依存)を克服しようと、積極的に動いています。
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内製化の推進: MAPPAは東京だけでなく仙台にもスタジオを持ち、若手アニメーターを社員として採用・育成しています。「動画」や「仕上げ」といった工程をできるだけ自社(国内)で完結させる「内製化」を急いでいます。
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デジタル化: デジタル作画をいち早く導入しており、データのやり取りがスムーズです。
3. それでも避けられない「中国依存」
これだけ対策をしていても、『チェンソーマン』のような超絶クオリティの作品は、多くの協力会社の支えで成り立っています。
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クレジットに見る海外勢: 『チェンソーマン』のスタッフロールを見ると、やはり中国のスタジオ(「無錫」「上海」などの地名が入った会社)の名前が多く並んでいます。
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特に「動画」や「色塗り(仕上げ)」の工程では、中国の精鋭スタジオがクオリティを支えていました。
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物理的な限界: いくらMAPPAが自社社員を増やしているとはいえ、全12話の膨大な作業量を自社スタッフだけでこなすのは不可能です。もし中国とのネットワークが遮断されたら、『チェンソーマン』級のクオリティを維持して放送し続けることは、現在のMAPPAであっても極めて困難です。
4. 今後の展開(劇場版『レゼ篇』など)はどうなる?
今後予定されている続編(劇場版など)についても、以下のことが言えます。
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市場としての中国: 中国には『チェンソーマン』の熱狂的なファンが多く、bilibiliなどの配信プラットフォームからの収入は莫大です。政治的な理由で中国市場から締め出されると、「制作はできるが、利益が大幅に減る」というビジネス上の大打撃を受けます。
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クオリティへの影響: 中国のトップクラスの原画マンやCGスタジオが参加できなくなると、私たちが期待している「劇場版クオリティ」を出すためのハードルが劇的に上がります。
結論
『チェンソーマン』は、お金の面では「かなり大丈夫(自立している)」と言えますが、作る現場の面では「中国と切れると、これまでのクオリティは維持できない」というのが現実的なラインです。
MAPPAは「日本国内で全て完結できる体制」を最も熱望して動いている会社の一つですが、それでもまだ、中国という巨大な「制作の筋肉」なしでは、あの圧倒的な映像を作ることはできないのが現状です。