20分後、二人はハンバーガーにかじりついていた。
「おごりってこれ?」
 
「うん。俺金ないんだ。」
 
「どうして?昼も夜も働いてるのに。借金でもあるの?」
 
「ぷっ。ないよ~。」
 
「じゃあどうして?」
 
「俺、もうすぐオーストラリアに行くんだ。」
 
「オーストラリア?」
 
「うん。友達が向こうで牧場やってて一緒にやろうって言ってるんだ。」
 
「へええ。」
 
「貯金もだいぶ貯まったし、来月ぐらいには行きたいと思ってる。」
 
「そうなんだ。」
「うん。」
若者は自分の名前を真人と言った。
 
「真実の人でまことなんだ。」
 
「へええ。真人君か。」
 
「君はないだろ。俺年上だよ。」
 
「まあいいじゃない。真人くん。」
 
扶貴は楽しかった。
そして自分の夢を語る真人がまぶしかった。
 
-好きになったのかな・・・わたし。-
 
そう思った瞬間扶貴は全身熱くなって、顔が火照るのがわかった。
 
「あれ、暑い?暖房効きすぎかな?出ようか?」
 
扶貴はまともに真人の顔が見られなくなっていた。
下を向いたままうなづくのがやっとだった。
 
 
外に出て見ると木枯らしがピュウッと二人の間を通り抜けていった。
 
「うわ。寒いな。」
 
「うん。」
真人は空を見上げた。
 
「あっ!」
 
「何?」
 
「ほら、雪!初雪だ。」
 
見ると灰色の空から小さな白い雪が舞い降りてきた。
 
「知ってる?初雪をつかむと夢が叶うんだって。」
 
「そうなの?」
 
「うん。絶対つかんでやる。」
そう言いながら真人は落ちてくる雪をつかもうと手を伸ばした。
 
「扶貴もつかめよ。」
 
「うん。」
その時扶貴はオリオンではなくなっていた。
 
 
                  つづく