「何話してたの?」
「いや、たいした事は・・・」
「あんな人と話してもしようがないでしょ。とっても軽薄そうな感じの人だったし。それより私たちには任務があるのよ。この任務には・・・」
「わかってるよ。エルンゼの未来だろ。」
「わかってるんならもっとしっかりしてよね。もう。あなたがそんなだから私がうるさく言わなきゃいけないでしょ。」
「ほんとにうるさいよ・・・」
「なんですって?」
「いや。別に。」
「もういいわ。とにかくニングをどうしてもお母さんに会わせなきゃいけないのよ。この後ニングは冷酷な指導者になっていくんだから。それを阻止するには母親との人間的なつながりが必要なのよ。それしか核戦争を避ける方法はないの。ビスクールがニングをどうするつもりか・・・それも心配だし・・・暗くなってからもう一度来る事にしましょう。さっきみたいに邪魔が入ると困るから。」
「わかった。それじゃあの二人の姉妹には何て?」
「あの二人には、はっきりするまで待ってもらうしかないわ。」
「そうだな。じゃあ僕が電話しておくよ。」
「なんだか嬉しそうね。」
「い、いや。そんな事ないよ。」
「まあいいわ。それじゃ頼むわよ。」
「ああ。」
タイートは莉絵の携帯に電話できる事が嬉しかった。
ルゥ-シュに瓜二つの莉絵に。
電話番号はさっきの店で聞いておいた。
「もしもし、莉絵さん?僕、太一だけど。」
「ああ、太一さん?さっきはどうも。」
「いや。実はね。ニングと会う段取りなんだけど、ちょっと事情が変わってね。」
「何かあったんですか?」
「たいした事はないんだけど、少し時間を調整する必要が出来てね。ちょっと遅くなるかもしれないんだ。」
「そうですか・・・」
「でもそんなに心配しなくて大丈夫だよ。僕に任せておいて。」
「あ、はい。太一さん、優しいんですね。」
莉絵に優しいと言われたタイートは電話の向こうにいるルゥ-シュとそっくりな莉絵の顔を思い出し、嬉しくて仕方なかった。
電話が終わったタイートに、ユークが言った。
「にやついていたわよ。」
「え?そうかな?」
「にやにや笑ってたじゃない。」
「そんなことないよ。」
恥ずかしくなったタイートはあわててしまった。
「そ、それよりこれからどうする?」
「待つしかないけど・・・さっきの人もう来ないでしょうね?」
「さあ、どうかな・・・でもいい人そうだったけど。」
「どうかしら・・・いい人そうじゃ困るのよ。とにかく私たちの邪魔をしないでくれれいいけど。」
「もう来ないだろう。ちょっと見に来ただけみたいだったし。」
タイートはまた会う事になると言われた事は、黙っている事にした。
またユークに文句を言われるのがわかっていたからだ。
ところがこの後、タイートの期待は裏切られる事になるのだった。
「暗くなったらニングを助けに行くわよ。」
「ああ。」
「じゃあそれまで少し休みましょう。」
ユークとタイートは車の中ではあったが、仮眠を取る事にした。
シートを倒し身体を伸ばすと目を閉じた。
そしてタイートの脳裏に浮かんだのは、ルゥ-シュの笑顔だった。
ルゥ-シュがタイートに微笑んでいた。
ルゥ-シュがタイートに向かって手を差し伸べた。
その手をつかもうと、タイートは腕を伸ばした。
もう少しでルゥ-シュの手に触れる・・・という時ルゥ-シュは遠ざかっていく。
タイートは必死でルゥ-シュを追いかけた。
やっと追いつき腕を引っ張った。
振り向いたルゥ-シュは、泣いていた。
ルゥ-シュの涙を見て、タイートも悲しくなってきた。
タイートの瞳に涙が溢れてきた。
「タイー。タイー。」
ルゥ-シュが悲しそうな瞳で、タイートに呼びかけていた。
「ルゥ-。待って。僕も一緒に・・・」
「さよなら・・・」
タイートの瞳が涙でいっぱいになり、愛しいルゥ-シュの姿が曇って行く。
「ルゥ-・・・」
つづく
「いや、たいした事は・・・」
「あんな人と話してもしようがないでしょ。とっても軽薄そうな感じの人だったし。それより私たちには任務があるのよ。この任務には・・・」
「わかってるよ。エルンゼの未来だろ。」
「わかってるんならもっとしっかりしてよね。もう。あなたがそんなだから私がうるさく言わなきゃいけないでしょ。」
「ほんとにうるさいよ・・・」
「なんですって?」
「いや。別に。」
「もういいわ。とにかくニングをどうしてもお母さんに会わせなきゃいけないのよ。この後ニングは冷酷な指導者になっていくんだから。それを阻止するには母親との人間的なつながりが必要なのよ。それしか核戦争を避ける方法はないの。ビスクールがニングをどうするつもりか・・・それも心配だし・・・暗くなってからもう一度来る事にしましょう。さっきみたいに邪魔が入ると困るから。」
「わかった。それじゃあの二人の姉妹には何て?」
「あの二人には、はっきりするまで待ってもらうしかないわ。」
「そうだな。じゃあ僕が電話しておくよ。」
「なんだか嬉しそうね。」
「い、いや。そんな事ないよ。」
「まあいいわ。それじゃ頼むわよ。」
「ああ。」
タイートは莉絵の携帯に電話できる事が嬉しかった。
ルゥ-シュに瓜二つの莉絵に。
電話番号はさっきの店で聞いておいた。
「もしもし、莉絵さん?僕、太一だけど。」
「ああ、太一さん?さっきはどうも。」
「いや。実はね。ニングと会う段取りなんだけど、ちょっと事情が変わってね。」
「何かあったんですか?」
「たいした事はないんだけど、少し時間を調整する必要が出来てね。ちょっと遅くなるかもしれないんだ。」
「そうですか・・・」
「でもそんなに心配しなくて大丈夫だよ。僕に任せておいて。」
「あ、はい。太一さん、優しいんですね。」
莉絵に優しいと言われたタイートは電話の向こうにいるルゥ-シュとそっくりな莉絵の顔を思い出し、嬉しくて仕方なかった。
電話が終わったタイートに、ユークが言った。
「にやついていたわよ。」
「え?そうかな?」
「にやにや笑ってたじゃない。」
「そんなことないよ。」
恥ずかしくなったタイートはあわててしまった。
「そ、それよりこれからどうする?」
「待つしかないけど・・・さっきの人もう来ないでしょうね?」
「さあ、どうかな・・・でもいい人そうだったけど。」
「どうかしら・・・いい人そうじゃ困るのよ。とにかく私たちの邪魔をしないでくれれいいけど。」
「もう来ないだろう。ちょっと見に来ただけみたいだったし。」
タイートはまた会う事になると言われた事は、黙っている事にした。
またユークに文句を言われるのがわかっていたからだ。
ところがこの後、タイートの期待は裏切られる事になるのだった。
「暗くなったらニングを助けに行くわよ。」
「ああ。」
「じゃあそれまで少し休みましょう。」
ユークとタイートは車の中ではあったが、仮眠を取る事にした。
シートを倒し身体を伸ばすと目を閉じた。
そしてタイートの脳裏に浮かんだのは、ルゥ-シュの笑顔だった。
ルゥ-シュがタイートに微笑んでいた。
ルゥ-シュがタイートに向かって手を差し伸べた。
その手をつかもうと、タイートは腕を伸ばした。
もう少しでルゥ-シュの手に触れる・・・という時ルゥ-シュは遠ざかっていく。
タイートは必死でルゥ-シュを追いかけた。
やっと追いつき腕を引っ張った。
振り向いたルゥ-シュは、泣いていた。
ルゥ-シュの涙を見て、タイートも悲しくなってきた。
タイートの瞳に涙が溢れてきた。
「タイー。タイー。」
ルゥ-シュが悲しそうな瞳で、タイートに呼びかけていた。
「ルゥ-。待って。僕も一緒に・・・」
「さよなら・・・」
タイートの瞳が涙でいっぱいになり、愛しいルゥ-シュの姿が曇って行く。
「ルゥ-・・・」
つづく