だがいつまでもニングを奪われたユークとタイートはただ呆然と見送っているわけにはいかなかった。
ビスクールのワゴン車が発車するとすぐに二人は後をつけた。
ビスクールにしてもこのままでは自分たちの世界へ戻れないのだ。
どこかにあるだろう、未来への転送装置のある所まではどうしても行かなければならない。
ビスクールの目的が何なのか、まだユークとタイートはつかんでいない。
ユークとタイートは、ワゴン車から数メートル後ろをぴったりとついていった。
ワゴン車は、やがて田園地帯に入って行った。
広がる田畑を抜けて、ワゴン車はさらに進んだ。
日本人ならこの田園風景を眺め心休まるだろうが、今のビスクールやエルンゼの戦士たちにはもちろんそんな感傷はなかった。
さらに奥へ奥へと進み、山里も通りぬけあまり人気もないようなところに大きな民家があった。
かつては大勢の家族でにぎわっていたのかもしれない、平屋の大きな家だった。
昔は立派な屋敷だったのだろう。
門構えもなかなかのものだった。
車を中に乗りいれるとワゴン車を家屋の前にとめ、大きな門を閉めた。
その家は石垣の上に広がる広大な敷地の中にあった。
奥には牛小屋が連なり、離れらしき建物も見える。
おそらくこの村の長クラスの屋敷だったのだろう。
だがこの村も他の村と同じように過疎が進み、残っている住民もこの山奥には住んでいない。
ビスクールの戦士が身を隠すにはもってこいの建物だった。
ュグーニラが先に入るとしばらくしてから再び姿を現した。
その後ニングに銃を突きつけたままウ-サナと一緒に、ニングは中に入って行った。
ユークとタイートはその様子を牛小屋の陰から見ていた。
二人は表門からぐるっと周った、反対側の勝手口から侵入したのだ。
表門は閉められてしまったため、裏口しか入る方法はなかった。
だが運良く、ビスクールが手間取ったおかげでニングが屋敷に入るところを見る事ができた。
どうやらここへ来る途中で、催眠剤でも射たれたのだろう。
ぐったりした様子で、ュグーニラが背中に背負っていた。
ニングの性格からしておとなしく銃を突きつけられているわけがない。
相当暴れたためかビスクールの方で先手を打ったのかはわからないが、今は眠っているらしくニングはおとなしく連れられて行った。
「おい、どうする?」
「どうするって、もちろん連れて行くわよ。」
「連れて行くって?どうやって?」
「そうねえ。まあここにはエルンゼで1,2を争う銃の名手がいるんだし。」
その時二人の背後から声がした。
「こんなところで何をしているの?」
二人に声をかけたのは、年の頃は27,8歳の青年だった。
「え、ええ。ちょっと。それよりあなたは?」
「僕はこの家の管理を任されている市役所の桧山四郎というんだけど。」
「はあ・・・」
「君たちこの家をのぞいていたようだけど、ここは空家だよ。」
「いいえ。誰かいるみたいです。」
「ええ~そうなの?また不良グループでも入り込んでるのかな・・・」
「まあそうだと思います。じゃあ私たちは帰ります。」
「そうかい。ふふっ。」
「何がおかしいんですか?」
「いや、君たちの態度を見ていると逃げるみたいだと思って。」
「い、いやそんな事ありません。」
「そう?」
「じゃあ、行くわよ。」
ユークはそう言うと走って裏口から出て行った。
タイートもあわててついていこうとした。
「あの女の子は気が強そうだね。」
「強いなんてもんじゃありません。」
「あははは。彼氏も大変だね。」
「僕は彼氏じゃありません。僕には・・・」
「えっ?他にもいるの?」
「い、いえ。そんな・・・じゃ僕も行かなきゃ。」
「ああ。また会えるかな?」
「えっ?」
「いや、いいんだ。縁があればだよ。でも僕はまた会えそうなきがするな~。こう見えても僕は霊感が強いって昔からいわれていてね。」
「はあ・・・霊感ですか・・・」
「そうだよ。僕には未来を見る事が出来るんだ。その霊感が言ってる。君たちとまた会えるって。信じないかい?」
「いや、そういうわけでは・・・」
「まあ、いいさ。時間が経てばわかるさ。おっと、いけない。女の子が君のほうをにらんでるよ。早く行ったほうがいいようだ。」
「あ、はい。」
「じゃあまたね。」
「はあ・・・」
首をかしげながら、タイートはユークが待っている方へ走った。
二人を見送る、桧山という青年の顔にはなぜか微笑みが浮かんでいた。
つづく
ビスクールのワゴン車が発車するとすぐに二人は後をつけた。
ビスクールにしてもこのままでは自分たちの世界へ戻れないのだ。
どこかにあるだろう、未来への転送装置のある所まではどうしても行かなければならない。
ビスクールの目的が何なのか、まだユークとタイートはつかんでいない。
ユークとタイートは、ワゴン車から数メートル後ろをぴったりとついていった。
ワゴン車は、やがて田園地帯に入って行った。
広がる田畑を抜けて、ワゴン車はさらに進んだ。
日本人ならこの田園風景を眺め心休まるだろうが、今のビスクールやエルンゼの戦士たちにはもちろんそんな感傷はなかった。
さらに奥へ奥へと進み、山里も通りぬけあまり人気もないようなところに大きな民家があった。
かつては大勢の家族でにぎわっていたのかもしれない、平屋の大きな家だった。
昔は立派な屋敷だったのだろう。
門構えもなかなかのものだった。
車を中に乗りいれるとワゴン車を家屋の前にとめ、大きな門を閉めた。
その家は石垣の上に広がる広大な敷地の中にあった。
奥には牛小屋が連なり、離れらしき建物も見える。
おそらくこの村の長クラスの屋敷だったのだろう。
だがこの村も他の村と同じように過疎が進み、残っている住民もこの山奥には住んでいない。
ビスクールの戦士が身を隠すにはもってこいの建物だった。
ュグーニラが先に入るとしばらくしてから再び姿を現した。
その後ニングに銃を突きつけたままウ-サナと一緒に、ニングは中に入って行った。
ユークとタイートはその様子を牛小屋の陰から見ていた。
二人は表門からぐるっと周った、反対側の勝手口から侵入したのだ。
表門は閉められてしまったため、裏口しか入る方法はなかった。
だが運良く、ビスクールが手間取ったおかげでニングが屋敷に入るところを見る事ができた。
どうやらここへ来る途中で、催眠剤でも射たれたのだろう。
ぐったりした様子で、ュグーニラが背中に背負っていた。
ニングの性格からしておとなしく銃を突きつけられているわけがない。
相当暴れたためかビスクールの方で先手を打ったのかはわからないが、今は眠っているらしくニングはおとなしく連れられて行った。
「おい、どうする?」
「どうするって、もちろん連れて行くわよ。」
「連れて行くって?どうやって?」
「そうねえ。まあここにはエルンゼで1,2を争う銃の名手がいるんだし。」
その時二人の背後から声がした。
「こんなところで何をしているの?」
二人に声をかけたのは、年の頃は27,8歳の青年だった。
「え、ええ。ちょっと。それよりあなたは?」
「僕はこの家の管理を任されている市役所の桧山四郎というんだけど。」
「はあ・・・」
「君たちこの家をのぞいていたようだけど、ここは空家だよ。」
「いいえ。誰かいるみたいです。」
「ええ~そうなの?また不良グループでも入り込んでるのかな・・・」
「まあそうだと思います。じゃあ私たちは帰ります。」
「そうかい。ふふっ。」
「何がおかしいんですか?」
「いや、君たちの態度を見ていると逃げるみたいだと思って。」
「い、いやそんな事ありません。」
「そう?」
「じゃあ、行くわよ。」
ユークはそう言うと走って裏口から出て行った。
タイートもあわててついていこうとした。
「あの女の子は気が強そうだね。」
「強いなんてもんじゃありません。」
「あははは。彼氏も大変だね。」
「僕は彼氏じゃありません。僕には・・・」
「えっ?他にもいるの?」
「い、いえ。そんな・・・じゃ僕も行かなきゃ。」
「ああ。また会えるかな?」
「えっ?」
「いや、いいんだ。縁があればだよ。でも僕はまた会えそうなきがするな~。こう見えても僕は霊感が強いって昔からいわれていてね。」
「はあ・・・霊感ですか・・・」
「そうだよ。僕には未来を見る事が出来るんだ。その霊感が言ってる。君たちとまた会えるって。信じないかい?」
「いや、そういうわけでは・・・」
「まあ、いいさ。時間が経てばわかるさ。おっと、いけない。女の子が君のほうをにらんでるよ。早く行ったほうがいいようだ。」
「あ、はい。」
「じゃあまたね。」
「はあ・・・」
首をかしげながら、タイートはユークが待っている方へ走った。
二人を見送る、桧山という青年の顔にはなぜか微笑みが浮かんでいた。
つづく