ユークとタイートを見つめる二人の少年と少女。

少年の名前はュグー二ラ。
少女の名前はウーサナという。
二人共15,6歳の若さだが、瞳には油断のならない鋭い光が絶えず浮かんでいた。

やがてユークとタイートは店を出て行った。
するとュグーニラがあわてて腰を浮かし、ウ-サナに言った。

「おい。追いかけなくていいのか?」

「ふふふ。いいのよ。あいつらの行き先はわかってるんだから。あわてなくていいのよ。あんたってほんとにばかね。それぐらい少し考えればわかるでしょ。」

「そ、そうか。」
ュグーニラは椅子に座り直した。
座ってから一瞬の後、ュグーニラはさっきのウ-サナの言葉を思いだし、遅ればせながら反論を始めた。

「おい。ちょっと言いすぎじゃないか。ばかとはなんだよ。」

「あははは。だからあんたはばかだって言うのよ。今頃怒ってたんじゃ戦闘時にはもう撃ち殺されているわ。」

「おい。また。」

「もういいわ。あんたと遊んでるほどヒマじゃないのよ。本部にはさっき報告しておいたから次の作戦にうつるわよ。」

「えっ?次の作戦って?」

「あんたは、知らなくていいの。私の言う事を聞いていればいいのよ。」

「よし。わかった。いつでもあいつらをやっつけてやるぜ。」

「あんたの取りえはそれだけなんだから。ちゃんとやってよ。」

「おう。」


この二人、言うまでもなくビスクール帝国の戦士である。
やはり本部からの命を受けてやって来たのだった。

ウ-サナは17歳。ュグーニラは16歳になる。
二人ともビスクールの若手の戦士の中でも飛び抜けた戦績を収めていた。

エルンゼに送り込んでいた諜報員からの報告で、二人の戦士が21世紀の日本に向かった事を知らされビスクールから派遣された。
今度の任務はエルンゼはもちろん、ビスクールにとっても国の将来を決める重要なものである事は本部から散々言われてきた。

ニングをこちらの手に入れてビスクールが有利になるように洗脳し、歴史を操ろうというのが最終目的だった。
そのためにユークとタイートの後をつけていた。


ユークとタイートもそうだが、一見したところ普通の高校生にしか見えない二人が国の未来を、いや国の存続を担ってこの時代にやって来たとは、かりそめの平和に甘んじている今の日本人には想像すら出来なかった。


しかし大衆は知るべきことを知らされず、薄氷の上に自分たちの生活がある事に思い至る事は難しかったかもしれない。

だがこの国の為政者は、自分たちの怠慢がやがてやってくる世界の終わりを導いている事に気付いてもよかった。


全ての事が悲劇へとつながっていた。
いや、ある皮肉な歴史学者によるとこの世で最も滑稽な喜劇だったとも言えるらしい。

そしてそのために若者たちが過酷な戦いを、この時代で繰り広げなくてはならないのだった。


                つづく