ホテルを出てみると、二人の少女は仲良く並んで歩いていた。
ユークは、ゆっくりと二人の後に続いている。

やがて二人は一軒の喫茶店に入った。
当然の事だが、ユークとタイートも続いて店に入った。

二人は奥の席に座っていた。
店内は少し薄暗く、客もまばらだった。
ユークとタイートは、空いていた隣の席に座った。

ユークはコーヒー、タイートはチョコレートサンデーを注文した。

「あなたって甘いもの好きだったのね。」

「いいだろう。僕が何を好きでも。だいたい男だって甘いものが好きなんだ。勝手に甘いものは女の子のものにしないでくれよ。」

「はい、はい。わかったわよ。」


横では姉妹が小さな声で話していた。

「どうしよう?」

「そうね。本当にお母さん、泣いてたの?」

「本当だってば。私が帰って来た時にさっきの子が帰ったんだけど、そのあと台所に降りてきた時お母さん涙流してた・・・」

「それがさっきの子に関係あるのかな?」

「絶対関係あるわよ。私のカンに間違いないわよ。」

「まあね。莉絵のカンは気持ち悪いほど当たるもんね。」

「そうでしょ。」

「でもそうだとしたらなぜお母さんが泣くの?」

「さあ・・・」


その様子を見ていたユークが突然二人に話しかけた。

「あなたたち、お母さんから何も聞いてないの?」

「?」


急に隣の席の見知らぬ少女から聞かれても答えるわけがない。

「お、おい。」
タイートが割って入った。

「あら、いいじゃない。こっちは急いでるんだから、単刀直入がいいのよ。」

「でも・・・」

二人の様子を見ていた姉が言った。
「あの・・・あなたたちは?」

「あ、ごめんなさい。私たちさっきの女の子の友達なの。彼女さっき用事があるって出かけて行ったんだけど、帰ってきてから様子がおかしくて・・・」

「そうなんですか・・・うちに来てたみたいなんですけど。ね?」

「え、ええ。」
莉絵が不安そうにうなづいた。

「何かあったんですか?」

「さあ、それは私たちにもわかりません。母に聞いてもわからないって言うし・・・」

「実は、彼女最近悩んでいたみたいで。」

「そう・・・さっきの感じだと悩んでるふうには見えなかったけど。なんだか少し威張ってるみたいな空気だったわよね?」

「そうね。話しかけても無視して行っちゃうし。日本語もしゃべってたから、私たちの言葉もわかってたようだし。」

二人の少女は心配そうな顔つきで話していた。

「ねえ、よかったら私たちに任せてくれないかしら?彼女に会えるように話してみるから。」
ユークがとんでもない事を言いだした。
タイートはあわててユークに向かった。

「お、おい。そんな事。」

「あら、大丈夫よ。あなた彼女と親しいんでしょ。あなたから話してあげなさいよ。」

「えっ!僕が?」

「当然でしょ。そのために来たんだから。」


最後の言葉は姉妹に聞こえないように小さな声だった。

「でも・・・」

「しっかりしてよね。エルンゼの未来は・・・」

「わかったよ。」
タイートは不承不承うなづいた。

「僕が何とか彼女に君たちに会ってくれるように頼むから。心配しなくていいよ。」

「えっ!本当ですか?」
莉絵が期待に満ちた瞳でタイートを見つめていた。

「ああ。大丈夫だよ。僕に任せておいて。」

莉絵はうれしそうににっこり笑った。
微笑んだ莉絵の顔は、花が開いたように美しく可憐だった。
タイートは莉絵の顔と、ルゥ-の笑顔を重ね合わせていた。

「ちょっと。」
タイートはユークにつつかれてはっとした。

「何ぼーっとしてるのよ。」

「ああ、ごめん。」

「見とれてる場合じゃないでしょ。いやね。ほんとに。」

「違うよ。そんな事じゃないんだ。」

「何ですって。それじゃあどんな事だって言うの?」

「だから、それは・・・」

タイートは恥ずかしさで真っ赤になってしまった。
そんな二人を見て柚衣が言った。

「二人って、とても仲がいいのね。」

「そんな事ない。」

「そうだよ。絶対ない。」

思わずユークとタイートは大声になってしまった。


「ほら、やっぱり仲がいいじゃない。」

「ふふふ。」

姉妹はユークとタイートを見ながら笑っていた。


                  つづく