タイートはルゥ-シュの行方を、思いつく限りの場所を探した。

あの木の下にも行ってみた。
ルゥーシュといつも二人で過したあの思い出の木の下。

木の下ではあの頃と変わらぬ風が吹き、葉陰はやさしくタイートを包んでくれた。
ただルゥーシュだけがいなかった。



タイートはその後も探し続けた。

しかしルゥ-シュの姿を見つける事は出来なかった。
タイートにもわかっていた。
身寄りのいないルゥーシュに行くところなどないことを。


タイートはルゥーシュを見つけられずに、休暇を終える事になった。

失望したタイートが、軍隊に帰る時が来た。
街を出る時にも、タイートはキロイには何も告げずに街を出て行った。

そんなタイートをキロイは屋敷の窓から見送った。

「タイート。ルゥーシュはもうお前の知らないところへ行ってしまったのだ。わが息子よ。しょせんルゥーシュはわたしたちとは違うのだ。」

キロイの言葉はタイートには届かなかった。



タイートは再び軍隊に戻った。

それからのタイートは、一心に訓練に打ちこんだ。
周りの訓練生の中でも飛びぬけた成績を収め、指導教官からも一目置かれる存在になっていった。

しかしタイートの瞳はいつも暗く沈んだままだった。
何かを捜し求めるような瞳は方向を見失っていた。


その後、タイートは故郷には帰る事がなくなった。

キロイは愛する息子を失い、タイートは愛する人を失った。

「ルゥーーーーー。」
タイートの声が夜の闇に虚しく響くだけだった。



                    つづく