「禁断の森」は、森と言われていたたが実際には木は1本もない。
岩だらけの荒涼とした荒地だった。
そこには町に入る事を許されない人たちがいた。
「スール」と呼ばれる人たちだった。
身分の低い人たちや、国に管理される事を望まない人たちが荒地に住んでいると思われていた。
そして荒地の人たちは、野蛮で乱暴な種族だと周知されていた。
町の人々が運悪く荒地に入り込むと、二度と町に戻る事はないと言われていた。
スールにみつかってしまったら最後、生き延びる事は出来ないと町の人たちは噂し、荒地に入る事を怖れていた。
スールはもともと町の人たちと変わりはなかった。
ただ世界が放射能に覆われ、荒廃した地球でも生存者がいた。
その時、スールの人々は隔離される事になった。
なぜならスールの人々は体内に放射能を帯びていた。
そのため最初は集中して治療するという目的で集められた。
しかしそれは口実でただ健常者から遠ざけたいだけだった。
ある負い目から逃れるために。
なぜなら人々は放射能のために身体が変形していた。
腕や足の奇形だけではなかった。
腰から下がくっついて生まれて来た者や、肩の上に二つの頭を持つものもいた。
人々は笑われ、嫌われた。
しかしそのうちきっといい薬が見つかりこの身体も治ると思っていた人もいたが、有効な治療方法が見つからないまま隔離されたままだった。
そして多くの人が死んだが、それでも一部は生き残った。
しかし身体の奇形は残ってしまった。
そのため人々は治っても町に入る事はなかった。
一緒に暮らす事に反対されてしまったからだ。
やがて年月がたつうちにその事は忘れられた。
今ではスールの人々さえも自分たちが、どうして禁断の森にいるのかそのわけを知る者はいなかった。
スールとして生まれ、スールとして死んでいくだけだった。
そんなスールを町の人は野蛮で卑しい人間だと思っていたのだ。
そこには何の根拠もなかったが、ただ禁断の森にいるというだけで。
タイートの父、キロイはタイートが軍隊に召集されている間になんとかしなければと思っていた。
このままではタイートはルゥ-シュと結婚してしまうだろう。
いつまでも許さなければタイートはなにをするかわからなかった。
それほど二人は思いつめていた。
キロイはタイートの願いを聞いてやりかったが、それは国の掟が許さない。
わずかに生き残った人類の存亡のため人口管理は厳しく統制されていた。
それに歯向かえばこの国では生きて行けない。
少なくとも町では不可能だった。
ナッキリーノの家を守るためにはタイートとルゥ-シュの結婚は絶対に諦めさせなければならなかった。
ついにタイートが軍隊に上がる日が来た。
タイートはルゥ-シュに何度も言った。
「いいかい、ルゥ-。僕は必ず戻ってくる。戻ってきたら結婚するんだ。だから待っていて。いいね。」
「ええ。待っているわ。タイー。」
「ルゥ-、お父さんが何を言っても僕を信じて待っていて。」
「ええ。あなただけを信じて。」
二人は誓い合って、旅立ちの日を迎えた。
つづく
岩だらけの荒涼とした荒地だった。
そこには町に入る事を許されない人たちがいた。
「スール」と呼ばれる人たちだった。
身分の低い人たちや、国に管理される事を望まない人たちが荒地に住んでいると思われていた。
そして荒地の人たちは、野蛮で乱暴な種族だと周知されていた。
町の人々が運悪く荒地に入り込むと、二度と町に戻る事はないと言われていた。
スールにみつかってしまったら最後、生き延びる事は出来ないと町の人たちは噂し、荒地に入る事を怖れていた。
スールはもともと町の人たちと変わりはなかった。
ただ世界が放射能に覆われ、荒廃した地球でも生存者がいた。
その時、スールの人々は隔離される事になった。
なぜならスールの人々は体内に放射能を帯びていた。
そのため最初は集中して治療するという目的で集められた。
しかしそれは口実でただ健常者から遠ざけたいだけだった。
ある負い目から逃れるために。
なぜなら人々は放射能のために身体が変形していた。
腕や足の奇形だけではなかった。
腰から下がくっついて生まれて来た者や、肩の上に二つの頭を持つものもいた。
人々は笑われ、嫌われた。
しかしそのうちきっといい薬が見つかりこの身体も治ると思っていた人もいたが、有効な治療方法が見つからないまま隔離されたままだった。
そして多くの人が死んだが、それでも一部は生き残った。
しかし身体の奇形は残ってしまった。
そのため人々は治っても町に入る事はなかった。
一緒に暮らす事に反対されてしまったからだ。
やがて年月がたつうちにその事は忘れられた。
今ではスールの人々さえも自分たちが、どうして禁断の森にいるのかそのわけを知る者はいなかった。
スールとして生まれ、スールとして死んでいくだけだった。
そんなスールを町の人は野蛮で卑しい人間だと思っていたのだ。
そこには何の根拠もなかったが、ただ禁断の森にいるというだけで。
タイートの父、キロイはタイートが軍隊に召集されている間になんとかしなければと思っていた。
このままではタイートはルゥ-シュと結婚してしまうだろう。
いつまでも許さなければタイートはなにをするかわからなかった。
それほど二人は思いつめていた。
キロイはタイートの願いを聞いてやりかったが、それは国の掟が許さない。
わずかに生き残った人類の存亡のため人口管理は厳しく統制されていた。
それに歯向かえばこの国では生きて行けない。
少なくとも町では不可能だった。
ナッキリーノの家を守るためにはタイートとルゥ-シュの結婚は絶対に諦めさせなければならなかった。
ついにタイートが軍隊に上がる日が来た。
タイートはルゥ-シュに何度も言った。
「いいかい、ルゥ-。僕は必ず戻ってくる。戻ってきたら結婚するんだ。だから待っていて。いいね。」
「ええ。待っているわ。タイー。」
「ルゥ-、お父さんが何を言っても僕を信じて待っていて。」
「ええ。あなただけを信じて。」
二人は誓い合って、旅立ちの日を迎えた。
つづく