「牛島君、菱友家の内情を調べてくれ。それから弁護士の柴田と菱友の息子とのつながりも頼むよ。それと秋本君の彼女の葉子ちゃんの事も念のために調べておいてくれ。」
「はい。わかりました。」
「それから安永はまだ専務の件かな?野口と香織はまだ福岡だったっけ?」
「もう間もなく戻って来るはずです。専務に化けて暴力団の所に行きましたけど、逆に組長の弱みをちらつかしたら向こうから逃げて行ったそうです。
野口君と香織ちゃんも今日中には片付けて福岡を発つって連絡が入りました。」
「そうか・・・今度は俺の出番は無かった。」
「専務の方は単なる女がらみの脅しでしたし、福岡支店長の不倫騒ぎも相手の女性の内縁の夫というチンピラにお金を渡す線で片付きそうですから。」
「いくらになった?」
「100万で話がついたそうです。」
「そうか。500万が100万か・・・値切ったなあ。」
「ばかなチンピラがふっかけて来ただけですからね。それなのに福岡支店長ったらおたおたして・・・情けない。」
「まあ、そう言うなよ。男は元来気の弱い動物なんだよ。」
「それにしたって。ひどすぎます。」
「あはっははは。君にかかっちゃ支店長もかたなしだな。しかしこの頃は小粒の事件が多いな。おかげで俺の出番が無いじゃないか。」
「それだけ小粒な人間が増えたって事でしょ。あの三人で十分です。室長が出て行くほどではありません。」
「そうか。でも今度は俺にも出番がありそうだな。天下の菱友が相手だしな。」
「室長、嬉しそうですね。」
「そりゃそうさ。俺はじっとしているのは性に合わないんだ。」
「ふふ。子供みたいですよ。」
「あははは。」
そこへ安永が帰って来た。
「ただいま。」
「ご苦労さん。」
「専務から室長によろしくとの事です。改めて挨拶に来るそうです。」
「え!もういいよ。俺、専務苦手なんだよ。」
「そうでしょうね。専務は、とにかくせこいですからね。チンピラの女に手をだして、そのチンピラに手切れ金をケチッたせいで余計に金額をつり上げられた挙げ句に泣きついてきたんですから。」
「まあ、まあ。雪ちゃん。今度は面白い案件だよ。雪ちゃんの出番もたっぷりあるからな。」
安永はもともと大衆劇団の一人息子だったが、今は劇団も無くなってしまっていた。
小さいころから舞台に立ちやっといい女形になり、そこそこ人気も上がって来た頃に両親が乗った車が事故にあい、死んでしまった。
その後、結局劇団が立ち行かなくなり、安永は田村に特技を買われて特別企画室の一員になった。
安永の特技とは劇団の頃の経験を生かして老若男女、誰にでも化けられるというものだ。
扮装はもちろんしぐさや声までそっくりで、近くで見ても本人と見分けられない。
田村はそんな安永の才能を高く買っていた。
そして劇団の頃の安永の名前が「雪之丞」だったのを知っている田村は、安永を「雪ちゃん」と呼んでいた。
特別企画室が動き出そうとしていた頃、こんな会話が交わされていた。
「どうすればいいんだ?このままじゃあ・・・」
「いいわけないじゃないの。ほっといたらあんな小娘に10億も持っていかれるのよ。そんな事我慢できないわ。」
「そりゃ僕だって嫌だけど・・・」
「だいたいあなたがあんなつまらない事故を起こしたからじゃないの。おかげでこんな事になってしまったんじゃないの。」
「悪かったって何度も謝ったじゃないか。」
話しているのはもちろん息子の宗孝。
もう一人は女性のようだが、後ろ姿のため誰かはわからない。
「いいわ。私に任せておきなさい。何とかしなきゃ・・・」
その言葉を聞いた時、宗孝の瞳に少し脅えたような光が見えた。
「頼むよ。僕じゃ無理だ。」
「ほんとに頼りないわね。しっかりしてちょうだい。あなたがこれから菱友を背負って行かなきゃいけないのよ。」
「わかってるよ。」
「柴田に明日来るように連絡をしておいて。いいわね。」
「うん。すぐに電話しておくよ。」
つづく
「はい。わかりました。」
「それから安永はまだ専務の件かな?野口と香織はまだ福岡だったっけ?」
「もう間もなく戻って来るはずです。専務に化けて暴力団の所に行きましたけど、逆に組長の弱みをちらつかしたら向こうから逃げて行ったそうです。
野口君と香織ちゃんも今日中には片付けて福岡を発つって連絡が入りました。」
「そうか・・・今度は俺の出番は無かった。」
「専務の方は単なる女がらみの脅しでしたし、福岡支店長の不倫騒ぎも相手の女性の内縁の夫というチンピラにお金を渡す線で片付きそうですから。」
「いくらになった?」
「100万で話がついたそうです。」
「そうか。500万が100万か・・・値切ったなあ。」
「ばかなチンピラがふっかけて来ただけですからね。それなのに福岡支店長ったらおたおたして・・・情けない。」
「まあ、そう言うなよ。男は元来気の弱い動物なんだよ。」
「それにしたって。ひどすぎます。」
「あはっははは。君にかかっちゃ支店長もかたなしだな。しかしこの頃は小粒の事件が多いな。おかげで俺の出番が無いじゃないか。」
「それだけ小粒な人間が増えたって事でしょ。あの三人で十分です。室長が出て行くほどではありません。」
「そうか。でも今度は俺にも出番がありそうだな。天下の菱友が相手だしな。」
「室長、嬉しそうですね。」
「そりゃそうさ。俺はじっとしているのは性に合わないんだ。」
「ふふ。子供みたいですよ。」
「あははは。」
そこへ安永が帰って来た。
「ただいま。」
「ご苦労さん。」
「専務から室長によろしくとの事です。改めて挨拶に来るそうです。」
「え!もういいよ。俺、専務苦手なんだよ。」
「そうでしょうね。専務は、とにかくせこいですからね。チンピラの女に手をだして、そのチンピラに手切れ金をケチッたせいで余計に金額をつり上げられた挙げ句に泣きついてきたんですから。」
「まあ、まあ。雪ちゃん。今度は面白い案件だよ。雪ちゃんの出番もたっぷりあるからな。」
安永はもともと大衆劇団の一人息子だったが、今は劇団も無くなってしまっていた。
小さいころから舞台に立ちやっといい女形になり、そこそこ人気も上がって来た頃に両親が乗った車が事故にあい、死んでしまった。
その後、結局劇団が立ち行かなくなり、安永は田村に特技を買われて特別企画室の一員になった。
安永の特技とは劇団の頃の経験を生かして老若男女、誰にでも化けられるというものだ。
扮装はもちろんしぐさや声までそっくりで、近くで見ても本人と見分けられない。
田村はそんな安永の才能を高く買っていた。
そして劇団の頃の安永の名前が「雪之丞」だったのを知っている田村は、安永を「雪ちゃん」と呼んでいた。
特別企画室が動き出そうとしていた頃、こんな会話が交わされていた。
「どうすればいいんだ?このままじゃあ・・・」
「いいわけないじゃないの。ほっといたらあんな小娘に10億も持っていかれるのよ。そんな事我慢できないわ。」
「そりゃ僕だって嫌だけど・・・」
「だいたいあなたがあんなつまらない事故を起こしたからじゃないの。おかげでこんな事になってしまったんじゃないの。」
「悪かったって何度も謝ったじゃないか。」
話しているのはもちろん息子の宗孝。
もう一人は女性のようだが、後ろ姿のため誰かはわからない。
「いいわ。私に任せておきなさい。何とかしなきゃ・・・」
その言葉を聞いた時、宗孝の瞳に少し脅えたような光が見えた。
「頼むよ。僕じゃ無理だ。」
「ほんとに頼りないわね。しっかりしてちょうだい。あなたがこれから菱友を背負って行かなきゃいけないのよ。」
「わかってるよ。」
「柴田に明日来るように連絡をしておいて。いいわね。」
「うん。すぐに電話しておくよ。」
つづく