ドアの鍵がカチャッと音をたてた。
そして…ドアノブが少しずつ回っている。
-ギッ、ギッ。-
ドアノブが回りきり、ドアが少し開いた。
里香子は動く事も出来ずにドアを見つめていた。
ドアは静かに開いた。
そしてキャシーが、ふわふわと浮かびながら部屋に入って来た。
里香子は恐ろしくて、ベッドの上で震えていた。
キャシーは里香子を見るとその美しい顔に笑みを浮かべた。
-見つけた-
「お願い。助けて。」
-だめ。月ちゃんと約束した。殺すって。-
そう言うとキャシーのブルーの瞳がキラッと光を放った。
するとキャシーの金色の髪が、スルスルッと里香子の方に伸びてきた。
里香子は壁にすがりつくように張り付いていた。
やがてキャシーの髪は、恐ろしい速さで里香子の足元まで近づいていた。
キャシーの髪はそれ自体に命があるかのように意志を持っているようだった。
キャシーの髪は、足元からひざへ…ひざから腹へ…腹から胸元へ…
遂には首まで這ってきた。
キャシーの髪は里香子の首に絡みつくようにぐるぐると巻きついた。
やがてキャシーの髪は里香子の首を締め始めた。
キャシーの髪はどんどん里香子の首にくい込んで行った。
「うううっ…苦しい・…助けて…」
-誰も来ない。月ちゃんはもっと苦しんで死んだ。お前も苦しめばいい。-
「許・し・て…お願い…」
-だめ。月ちゃんと約束した。お前たちを殺すって。-
「お前たち?まさかパパとママも?」
-そう。キャシーが殺した。-
「助けて。何でもあげる・・・」
-いらない。月ちゃんが待ってる。-
「ううぅ・・・うぅ・・・・・・・・・・・・・・・」
やがて里香子の首が横に傾き、身体から力が抜けて行った。
-月ちゃん。終わった。-
「キャシー。ごめんね。ごめんね。私、間違ってたかもしれない・・・ 私、悲しくて悔しくて憎しみだけになってしまった。いつの間にか私悪魔になっていた。
私・・・キャシーに酷い事をさせて・・・本当にごめんね。」
-月ちゃん。どうして?-
「今はわかるの。叔父さんや叔母さんや理香子ちゃんを殺しても私の心は満たされなかった。
悲しみは残ったままだった。でもこの家に帰って来たら、お父様とお母様が待っていてくれた。
これからはここで3人で暮らしたい。
キャシー。ごめんね。もうキャシーと遊べない。
私、ここに居たい。3人でずっと居たいの。キャシー、ごめんね。」
-わかった、月ちゃん。友達さがす・・・キャシー友達さがして遊ぶ・・・-
「うん。さようなら。キャシー。」
-月ちゃん。さよなら・・・-
大きなその屋敷は、その後無人になり荒れて行った。
美しい屋敷だったが見る影もなく朽ち果てた。
やがて誰が広げるでもなかったが、ある噂が近在の家々にしみるように広がって行った。
死んだはずの父と母、そして娘の3人が庭で笑っていたとか・・・
そして夜になると誰もいないはずの屋敷の窓に灯りが灯っていたとか・・・
そんな噂が立ちその屋敷は幽霊が出るという評判で、誰も買い手がつかないまま放置されているそうだ。
そして今キャシーはある都市の大きなマンションの前の階段にちょこんと座っていた。
透き通るような白い肌に、美しい小さな波のようにウェーブのかかった金色の髪。
瞳はサファイアのように輝くブルーの瞳と少しふくらんだピンク色に輝く唇。
キャシーはつぶやいた。
-遊びましょ。友達・・・-
そこへこのマンションの住人らしい家族連れがやって来た。
若い両親と小さな可愛い女の子だった。
「あっ。可愛い。」
そう言うとキャシーを抱き上げた。
「ミイちゃん。やめなさい。汚いわ。」
「だってこのお人形、とってもきれい。」
「みいちゃんにはもっと可愛いのを買ってあげるから、その人形は置いて行きましょう。」
「いや~。このお人形がいいの。」
「おい。いいじゃないか。見た感じきれいそうだし。みいがこんなに気に入ってるんだから。」
「でも・・・」
夫の言う通りだった。
その人形はまるで今買って来たばかりのように美しかった。
捨てられたのではないのかもしれない・・・誰かが忘れて行ったのかも・・・
「じゃあいいわ。みいちゃん。お家に連れて行ってもいいわよ。」
「わあ~。よかった。」
「さあ、行きましょう。おじいちゃまとおばあちゃまが待っていらっしゃるわよ。今日ミイちゃんが来るのを楽しみにしてるって昨日お電話があったのよ。」
「は~い。キャシー。行きましょう。」
「え?キャシーって?みいちゃん。キャシーって誰?」
「このお人形よ。キャシーっていう名前だって。」
「ふふ。キャシーちゃんなのね。可愛い名前ね。」
若い母親は娘がこの美しい人形に名前を付けたのだと思っていた。
しかし幼い娘が名づけたのではなかった。
キャシーが娘の耳元で囁いたのだった。
-私、キャシー。友達・・・-
「うん。友達よ。キャシー。」
-遊びましょ-
「うん。」
「おーい。エレベーターが来たぞ。」
「はーい。みいちゃん。行きましょう。」
母親は幼い娘の手を引いてマンションの中に入って行った。
そして女の子に抱かれキャシーは美しい微笑を浮かべていた。
そして誰も気付かなかった。
キャシーの唇の両端が少し上がっている事に・・・
そしてキャシーの瞳が光っている事に・・・
-遊びましょ。友達・・・-
終わり
そして…ドアノブが少しずつ回っている。
-ギッ、ギッ。-
ドアノブが回りきり、ドアが少し開いた。
里香子は動く事も出来ずにドアを見つめていた。
ドアは静かに開いた。
そしてキャシーが、ふわふわと浮かびながら部屋に入って来た。
里香子は恐ろしくて、ベッドの上で震えていた。
キャシーは里香子を見るとその美しい顔に笑みを浮かべた。
-見つけた-
「お願い。助けて。」
-だめ。月ちゃんと約束した。殺すって。-
そう言うとキャシーのブルーの瞳がキラッと光を放った。
するとキャシーの金色の髪が、スルスルッと里香子の方に伸びてきた。
里香子は壁にすがりつくように張り付いていた。
やがてキャシーの髪は、恐ろしい速さで里香子の足元まで近づいていた。
キャシーの髪はそれ自体に命があるかのように意志を持っているようだった。
キャシーの髪は、足元からひざへ…ひざから腹へ…腹から胸元へ…
遂には首まで這ってきた。
キャシーの髪は里香子の首に絡みつくようにぐるぐると巻きついた。
やがてキャシーの髪は里香子の首を締め始めた。
キャシーの髪はどんどん里香子の首にくい込んで行った。
「うううっ…苦しい・…助けて…」
-誰も来ない。月ちゃんはもっと苦しんで死んだ。お前も苦しめばいい。-
「許・し・て…お願い…」
-だめ。月ちゃんと約束した。お前たちを殺すって。-
「お前たち?まさかパパとママも?」
-そう。キャシーが殺した。-
「助けて。何でもあげる・・・」
-いらない。月ちゃんが待ってる。-
「ううぅ・・・うぅ・・・・・・・・・・・・・・・」
やがて里香子の首が横に傾き、身体から力が抜けて行った。
-月ちゃん。終わった。-
「キャシー。ごめんね。ごめんね。私、間違ってたかもしれない・・・ 私、悲しくて悔しくて憎しみだけになってしまった。いつの間にか私悪魔になっていた。
私・・・キャシーに酷い事をさせて・・・本当にごめんね。」
-月ちゃん。どうして?-
「今はわかるの。叔父さんや叔母さんや理香子ちゃんを殺しても私の心は満たされなかった。
悲しみは残ったままだった。でもこの家に帰って来たら、お父様とお母様が待っていてくれた。
これからはここで3人で暮らしたい。
キャシー。ごめんね。もうキャシーと遊べない。
私、ここに居たい。3人でずっと居たいの。キャシー、ごめんね。」
-わかった、月ちゃん。友達さがす・・・キャシー友達さがして遊ぶ・・・-
「うん。さようなら。キャシー。」
-月ちゃん。さよなら・・・-
大きなその屋敷は、その後無人になり荒れて行った。
美しい屋敷だったが見る影もなく朽ち果てた。
やがて誰が広げるでもなかったが、ある噂が近在の家々にしみるように広がって行った。
死んだはずの父と母、そして娘の3人が庭で笑っていたとか・・・
そして夜になると誰もいないはずの屋敷の窓に灯りが灯っていたとか・・・
そんな噂が立ちその屋敷は幽霊が出るという評判で、誰も買い手がつかないまま放置されているそうだ。
そして今キャシーはある都市の大きなマンションの前の階段にちょこんと座っていた。
透き通るような白い肌に、美しい小さな波のようにウェーブのかかった金色の髪。
瞳はサファイアのように輝くブルーの瞳と少しふくらんだピンク色に輝く唇。
キャシーはつぶやいた。
-遊びましょ。友達・・・-
そこへこのマンションの住人らしい家族連れがやって来た。
若い両親と小さな可愛い女の子だった。
「あっ。可愛い。」
そう言うとキャシーを抱き上げた。
「ミイちゃん。やめなさい。汚いわ。」
「だってこのお人形、とってもきれい。」
「みいちゃんにはもっと可愛いのを買ってあげるから、その人形は置いて行きましょう。」
「いや~。このお人形がいいの。」
「おい。いいじゃないか。見た感じきれいそうだし。みいがこんなに気に入ってるんだから。」
「でも・・・」
夫の言う通りだった。
その人形はまるで今買って来たばかりのように美しかった。
捨てられたのではないのかもしれない・・・誰かが忘れて行ったのかも・・・
「じゃあいいわ。みいちゃん。お家に連れて行ってもいいわよ。」
「わあ~。よかった。」
「さあ、行きましょう。おじいちゃまとおばあちゃまが待っていらっしゃるわよ。今日ミイちゃんが来るのを楽しみにしてるって昨日お電話があったのよ。」
「は~い。キャシー。行きましょう。」
「え?キャシーって?みいちゃん。キャシーって誰?」
「このお人形よ。キャシーっていう名前だって。」
「ふふ。キャシーちゃんなのね。可愛い名前ね。」
若い母親は娘がこの美しい人形に名前を付けたのだと思っていた。
しかし幼い娘が名づけたのではなかった。
キャシーが娘の耳元で囁いたのだった。
-私、キャシー。友達・・・-
「うん。友達よ。キャシー。」
-遊びましょ-
「うん。」
「おーい。エレベーターが来たぞ。」
「はーい。みいちゃん。行きましょう。」
母親は幼い娘の手を引いてマンションの中に入って行った。
そして女の子に抱かれキャシーは美しい微笑を浮かべていた。
そして誰も気付かなかった。
キャシーの唇の両端が少し上がっている事に・・・
そしてキャシーの瞳が光っている事に・・・
-遊びましょ。友達・・・-
終わり