月子が死んだ後、理恵子は離れの月子の部屋を片付けるように言った。

「ああ~。せいせいしたわ。やっと死んだわ。」

「ほんとね。ねえ。ママ。」

「なあに。」

「私、月子のあの人形がほしいの。」

「え?あの人形?」

「そう。あの人形が前からほしかったの。」

「あんな気持ち悪い人形なんか捨てなさい。」

「イヤ。あの人形が欲しいの。」

「しようがないわね。」

「ありがとう。ママ。」


その日から里香子の部屋にキャシーは置かれた。
しかし里香子は気づいていなかった。
キャシーの顔に凍るような微笑が浮かんでいる事に・・・


3ヵ月後-
「あなた。最近里香子の様子がおかしいの。いつもボーッとしてるし、夜になると一人でぶつぶつ言ってるのよ。どうすればいいの?」

「なに?里香子が?いつからだ?」
夫の武雄はおろおろして言った。

「1ヶ月ぐらい前からなのよ。」

「どうして放っといたんだ?」

「私にばっかり言わないで。」

「おまえは母親じゃないか。」

「冗談じゃないわ。あなただって父親でしょ。」

「しようがないな。吉岡先生に相談してみるか。」

「ええー吉岡先生?あの先生は月子の主治医だったのよ。」

「いいじゃないか。もう月子もいないんだし。吉岡先生なら優秀な医者だ。」

「そうね・・・」


武雄と理恵子は、吉岡の病院へ里香子を連れて行く事になった。

「先生、里香子はどうなんでしょうか?」

「そうですね。少し入院して様子を見た方がいいでしょう。」

「わかりました。」


吉岡は武雄と理恵子が部屋を出て行くのを確かめるとつぶやいた。

「月ちゃん。上手く行ったよ。」
吉岡の顔は微笑んでいた。



                  つづく