少女はいつも窓を見ていた。
格子のはまった四角い窓だった。
部屋はいつも薄暗く、窓からかすかに入る細い光だけが少女の青白い顔を照らしていた。
少女の枕元にはいつもかわいい西洋人形が置いてあった。
それはまだ少女の両親が健在だった頃、少女に誕生日のお祝いとして買ってくれたものだった。
人形は金色に輝く美しい髪と、白く滑らかな肌を持っていた。
少しふっくらとした顔にはサファイアのような深みを帯びた瞳と、心持ち薄めのピンク色の唇が美しさを際立たせていた。
少女は初めて人形を見た時、父と母に人形を抱いたまま飛びついた。
「まあ。大丈夫?そんなに跳ねちゃ、だめよ。また吉岡先生に叱られちゃうわ。」
「いいじゃないか。月子がこんなに喜んでるんだ。」
「でも、あなた・・・そうね。」
母は少し涙ぐんでいるようだった。
少女がそんなに長く生きられない事を思うと何も言えなかったのだろう。
少女が14歳になって、少し経った5月だった。
少女がいつものようにベッドの中で人形と話していた時にその知らせが入った。
「お嬢様、旦那様と奥様が・・・」
「なあに?」
「お気をしっかりと持って下さいませ。」
「お父様とお母様がどうしたの?」
「実は・・・お車の事故でお二人とも亡くなられたそうでございます。」
「・・・うそ・・・」
「お嬢様・・・」
「そんな事・・・うそよ。」
「お嬢様。おかわいそうに・・・」
月子は泣いた。
涙が枯れるかと思うほど泣いた。
「キャシー。あなただけよ。もう私にはあなたしかいないの。あなたはどこにも行かないでね。」
月子は人形を抱き抱えたままつぶやいた。
人形はいつもと変わらない美しい微笑を浮かべていた。
月子は鉄格子のはまった高い窓から見える青空を出来る限り見ないようにしていた。
自由な外の世界を見る度に幸せだったあの頃を思い出してしまうからだった。
だが気がつくといつも窓を見てしまうのだった。
月子は、今はいない両親を思い出し涙を流した。
やがて涙は枯れたが、それでも窓を見上げていた。
つづく
格子のはまった四角い窓だった。
部屋はいつも薄暗く、窓からかすかに入る細い光だけが少女の青白い顔を照らしていた。
少女の枕元にはいつもかわいい西洋人形が置いてあった。
それはまだ少女の両親が健在だった頃、少女に誕生日のお祝いとして買ってくれたものだった。
人形は金色に輝く美しい髪と、白く滑らかな肌を持っていた。
少しふっくらとした顔にはサファイアのような深みを帯びた瞳と、心持ち薄めのピンク色の唇が美しさを際立たせていた。
少女は初めて人形を見た時、父と母に人形を抱いたまま飛びついた。
「まあ。大丈夫?そんなに跳ねちゃ、だめよ。また吉岡先生に叱られちゃうわ。」
「いいじゃないか。月子がこんなに喜んでるんだ。」
「でも、あなた・・・そうね。」
母は少し涙ぐんでいるようだった。
少女がそんなに長く生きられない事を思うと何も言えなかったのだろう。
少女が14歳になって、少し経った5月だった。
少女がいつものようにベッドの中で人形と話していた時にその知らせが入った。
「お嬢様、旦那様と奥様が・・・」
「なあに?」
「お気をしっかりと持って下さいませ。」
「お父様とお母様がどうしたの?」
「実は・・・お車の事故でお二人とも亡くなられたそうでございます。」
「・・・うそ・・・」
「お嬢様・・・」
「そんな事・・・うそよ。」
「お嬢様。おかわいそうに・・・」
月子は泣いた。
涙が枯れるかと思うほど泣いた。
「キャシー。あなただけよ。もう私にはあなたしかいないの。あなたはどこにも行かないでね。」
月子は人形を抱き抱えたままつぶやいた。
人形はいつもと変わらない美しい微笑を浮かべていた。
月子は鉄格子のはまった高い窓から見える青空を出来る限り見ないようにしていた。
自由な外の世界を見る度に幸せだったあの頃を思い出してしまうからだった。
だが気がつくといつも窓を見てしまうのだった。
月子は、今はいない両親を思い出し涙を流した。
やがて涙は枯れたが、それでも窓を見上げていた。
つづく