管理人が406号室の鍵を開けた。
ドアを開けると同時に淀んだ空気がむっと澪を包んだ。
澪は風呂、洗面所、台所と水周りを確認した。
だがどこにも水が漏れていなかった。
それどころか水の滴すら見当たらなかった。
「ね、ないでしょ。誰もいないんだから。それに前の人が出た後水道止めてるから、出るはずないんだ。」
「ええ・・・」
澪はうなずくしかなかった。
しかし部屋に戻るとやはり人形は濡れたままだった。
「どういう事なんだろう・・・」
澪は不気味なものを感じ始めていた。
翌日澪は帰宅してすぐ人形を見た。
また人形が濡れていないか確認したかった。
バッグをテーブルの上に置くと人形を抱きか抱えた。
人形は濡れていなかった。
「よかった。今日は大丈夫ね。」
人形の瞳は美しく輝き、唇は愛らしい笑みを浮かべている。
「いつ見てもきれいね。」
澪は人形を置いてあったチェストの上に戻した。
ほっとしたとたん、澪は汗がどっと吹き出して来た。
浴槽に湯を溜め澪は服を脱いだ。
湯船に全身浸かるとさっきまでの不安が跡形もなく消えて行った。
その時急に湯船の排水口からボコッ、ボコッ、という音が聞こえてきた。
「えっ!何?」
澪が排水口を見ると水がボコッという音と共に吹き出している。
「詰まったのかな・・・」
見ているうちに水はどんどん勢いを増して吹き出している。
少し水が溜まって来た。
その時澪は気付いた。
湯船の中の湯が急に冷たくなっている。
「寒い・・・何?どうして?」
澪はすぐに湯船を出るとシャワーを浴びようとしたがお湯が全然出て来ない。
「あれ?」
身体が冷たくなってきた澪は仕方なく、バスタオルで身体を拭いた。
そして排水口を見た澪の目に入ったのは黒い髪の塊だった。
少し気味悪かったが澪はその髪をつかむとゴミ箱に捨てようとしてふと気付いた。
その髪をよく見ると、明らかに澪のものではなかった。
澪は子供の頃から癖毛で自然に少しウエーブがかかっている。
だが澪が今手にしているのは黒くてまっすぐな髪だった。
「きゃっ!」
澪は思わずその髪を降り落とした。
黒い髪は排水口の上にぽっかりと浮かんでいる。
澪は気味が悪くて再び手にとる事も出来ずに見つめていた。
すると急に排水口が「プシュッ」という音を出した。
そしてあふれ出した水と共に髪もスルスルッと排水口の中に呑み込まれて行った。
後には何も残っていない。
澪は幻でも見たかのような気持ちだった。
だが澪の手にはあの髪をつかんだ時のなんとも言えない不気味な感触が残っていた。
澪は右手を何度も洗ったが、どうしてもその感触が抜けなかった。
つづく
ドアを開けると同時に淀んだ空気がむっと澪を包んだ。
澪は風呂、洗面所、台所と水周りを確認した。
だがどこにも水が漏れていなかった。
それどころか水の滴すら見当たらなかった。
「ね、ないでしょ。誰もいないんだから。それに前の人が出た後水道止めてるから、出るはずないんだ。」
「ええ・・・」
澪はうなずくしかなかった。
しかし部屋に戻るとやはり人形は濡れたままだった。
「どういう事なんだろう・・・」
澪は不気味なものを感じ始めていた。
翌日澪は帰宅してすぐ人形を見た。
また人形が濡れていないか確認したかった。
バッグをテーブルの上に置くと人形を抱きか抱えた。
人形は濡れていなかった。
「よかった。今日は大丈夫ね。」
人形の瞳は美しく輝き、唇は愛らしい笑みを浮かべている。
「いつ見てもきれいね。」
澪は人形を置いてあったチェストの上に戻した。
ほっとしたとたん、澪は汗がどっと吹き出して来た。
浴槽に湯を溜め澪は服を脱いだ。
湯船に全身浸かるとさっきまでの不安が跡形もなく消えて行った。
その時急に湯船の排水口からボコッ、ボコッ、という音が聞こえてきた。
「えっ!何?」
澪が排水口を見ると水がボコッという音と共に吹き出している。
「詰まったのかな・・・」
見ているうちに水はどんどん勢いを増して吹き出している。
少し水が溜まって来た。
その時澪は気付いた。
湯船の中の湯が急に冷たくなっている。
「寒い・・・何?どうして?」
澪はすぐに湯船を出るとシャワーを浴びようとしたがお湯が全然出て来ない。
「あれ?」
身体が冷たくなってきた澪は仕方なく、バスタオルで身体を拭いた。
そして排水口を見た澪の目に入ったのは黒い髪の塊だった。
少し気味悪かったが澪はその髪をつかむとゴミ箱に捨てようとしてふと気付いた。
その髪をよく見ると、明らかに澪のものではなかった。
澪は子供の頃から癖毛で自然に少しウエーブがかかっている。
だが澪が今手にしているのは黒くてまっすぐな髪だった。
「きゃっ!」
澪は思わずその髪を降り落とした。
黒い髪は排水口の上にぽっかりと浮かんでいる。
澪は気味が悪くて再び手にとる事も出来ずに見つめていた。
すると急に排水口が「プシュッ」という音を出した。
そしてあふれ出した水と共に髪もスルスルッと排水口の中に呑み込まれて行った。
後には何も残っていない。
澪は幻でも見たかのような気持ちだった。
だが澪の手にはあの髪をつかんだ時のなんとも言えない不気味な感触が残っていた。
澪は右手を何度も洗ったが、どうしてもその感触が抜けなかった。
つづく