6月も終わり、7月に入ると本格的な梅雨に入った。
毎日雨が降り続き、空はいつもどんよりと暗かった。
澪は仕事からの帰り道に、土砂降りの雨に逢ってしまった。
傘をさしていたが、横なぐりの雨で全身ぐっしょりと濡れてしまった。
急いで部屋に入り、服を脱ぐとシャワーを浴びた。
「ああ~、さっぱりした。」
髪をタオルで拭きながら浴室から出て来ると澪は何気なくチェストの上の人形を見た。
「あれ?」
あの美しい人形が全身ぐっしょりと濡れている。
しかも人形だけが濡れているのだ。
その横に置いてあるガラスで出来た白鳥の置物やチェストはまったく濡れていないのに、人形だけが濡れている。
それも金髪の髪から足先まで濡れている。
おまけに着ている白いドレスまで、しずくが落ちるほどなのだ。
「いやだ、また水漏れかな。いやだな~。上の人に文句言わなきゃ。」
澪はエアコンの送風口の近くに人形を置き乾かす事にした。
今日は気のせいか人形の瞳が濡れているように潤んで見えた。
人形がまるで涙を流しているようだった。
ふと人形の手に触れると、指先がいつもよりも冷たいような気がした。
「冷え過ぎたかな?」
澪は人形をチェストの上に戻した。
すると人形の瞳が澪をじっと見ているような気がした。
「寒かったのね。ごめんね。」
澪はそう言うと人形の頬を優しく撫でた。
それから3日後、澪が帰宅し、人形を見るとまた人形の全身がぐっしょりと濡れている。
「もう~、また?いいかげんにしてほしいわ。」
澪は上の階の住人に一言注意しようと4階の部屋に行く事にした。
4階の部屋の前に立つと表札を見た。
しかし、部屋の表札ははずされていた。
名前を出したくない人もいる事を知っていた澪は、別段不思議に思わなかった。
澪はチャイムを押した。部屋の中に軽やかな音が鳴り響くのを澪は聞いていた。
だが部屋の住人は一向に出て来なかった。
「困ったな・・・」
仕方なくこのマンションの管理人の所を訪ねた。
管理人夫婦が最上階に住んでいるのだ。
「すいません。」
少し間があり、60過ぎの半白頭の人の良さそうな男が出て来た。
「おや、珍しいね。」
「珍しいって?」
「あんたが来るの2回目だろう?」
「はい。」
「ここを訪ねるのは苦情がほとんどだからね。来る人は大抵決まっててね。」
「そうですか。」
「それでどうしたの?」
「4階の部屋の人に注意してほしいんです。4階からうちに水漏れしてるんです。さっき行ってみたんですけど、留守みたいだし。」
「4階って?あんたの上なら406だよね?」
「はい。うちが306ですから。」
「そりゃあ、おかしいね。406なら1ヶ月ほど前に引っ越して、今誰もいないよ。」
「ええ!でも水が漏れて落ちて来てるんです。」
「じゃあ、406見に行くから一諸にどうだい?」
「はい。行きます。」
澪は管理人と406号室をもう1度訪ねる事にした。
つづく
毎日雨が降り続き、空はいつもどんよりと暗かった。
澪は仕事からの帰り道に、土砂降りの雨に逢ってしまった。
傘をさしていたが、横なぐりの雨で全身ぐっしょりと濡れてしまった。
急いで部屋に入り、服を脱ぐとシャワーを浴びた。
「ああ~、さっぱりした。」
髪をタオルで拭きながら浴室から出て来ると澪は何気なくチェストの上の人形を見た。
「あれ?」
あの美しい人形が全身ぐっしょりと濡れている。
しかも人形だけが濡れているのだ。
その横に置いてあるガラスで出来た白鳥の置物やチェストはまったく濡れていないのに、人形だけが濡れている。
それも金髪の髪から足先まで濡れている。
おまけに着ている白いドレスまで、しずくが落ちるほどなのだ。
「いやだ、また水漏れかな。いやだな~。上の人に文句言わなきゃ。」
澪はエアコンの送風口の近くに人形を置き乾かす事にした。
今日は気のせいか人形の瞳が濡れているように潤んで見えた。
人形がまるで涙を流しているようだった。
ふと人形の手に触れると、指先がいつもよりも冷たいような気がした。
「冷え過ぎたかな?」
澪は人形をチェストの上に戻した。
すると人形の瞳が澪をじっと見ているような気がした。
「寒かったのね。ごめんね。」
澪はそう言うと人形の頬を優しく撫でた。
それから3日後、澪が帰宅し、人形を見るとまた人形の全身がぐっしょりと濡れている。
「もう~、また?いいかげんにしてほしいわ。」
澪は上の階の住人に一言注意しようと4階の部屋に行く事にした。
4階の部屋の前に立つと表札を見た。
しかし、部屋の表札ははずされていた。
名前を出したくない人もいる事を知っていた澪は、別段不思議に思わなかった。
澪はチャイムを押した。部屋の中に軽やかな音が鳴り響くのを澪は聞いていた。
だが部屋の住人は一向に出て来なかった。
「困ったな・・・」
仕方なくこのマンションの管理人の所を訪ねた。
管理人夫婦が最上階に住んでいるのだ。
「すいません。」
少し間があり、60過ぎの半白頭の人の良さそうな男が出て来た。
「おや、珍しいね。」
「珍しいって?」
「あんたが来るの2回目だろう?」
「はい。」
「ここを訪ねるのは苦情がほとんどだからね。来る人は大抵決まっててね。」
「そうですか。」
「それでどうしたの?」
「4階の部屋の人に注意してほしいんです。4階からうちに水漏れしてるんです。さっき行ってみたんですけど、留守みたいだし。」
「4階って?あんたの上なら406だよね?」
「はい。うちが306ですから。」
「そりゃあ、おかしいね。406なら1ヶ月ほど前に引っ越して、今誰もいないよ。」
「ええ!でも水が漏れて落ちて来てるんです。」
「じゃあ、406見に行くから一諸にどうだい?」
「はい。行きます。」
澪は管理人と406号室をもう1度訪ねる事にした。
つづく