めぐみは広美が帰った同じ時間にあの公園の近くにいた。
どうしても広美のために何かしたかった。
しかしそうは言ってもさすがにめぐみもやっぱり怖かった。
広美を殺した犯人を見つけたいとは思ったが同じ目に遭ったのでは何にもならない。

そこでめぐみは同じ大学の大森勇気を誘った。
勇気は気の良い優しい性格だった。
勇気という名前だが友人の間では名前負けだといつもからかわれている。

「ええ~嫌だよ~。怖いよ。めぐみもそんな事やめろよ。」

「ダメよ。広美を殺したやつを見つけるんだから。」

「そんな事警察に任せとけばいいんだよ。10人も殺してるんだろう?そんなやつを俺たちが捕まえられるわけないよ。」

「何言ってるのよ。捕まえるのは無理でも何か手がかりだけでも見つけたいのよ。あの時・・・私がもっと引き止めていれば広美は死なずに済んだかも知れないのよ。広美がかわいそうだと思わないの?」

「そりゃかわいそうだけど・・・」

「どうしても来ないって言うなら教授の車にハゲ本ってペンキで書いた事ばらすわよ。」

「え~めぐみが書けって言ったんじゃないか。」

「私そんな事言ったかしら?私あの時酔ってたからね。それにハゲって書けとは言ってないわよ。」
確かにめぐみ達は研究室で酒盛りをした帰りに萩本教授の車にいたずらしようと言い出したが調子に乗った勇気がハゲ本と書いたのだった。

「ひどいよ~」

「とにかく来るの?来ないの?」

「無茶な事しないって約束してくれるなら行くよ。」

「わかったわよ。何もしないからただちょっと見に行くだけだから。」

「もう、しようがないなあ。」
勇気は半分泣きそうになりながら付いてくることになった。

めぐみと勇気は恐る恐る公園の中を歩いてみたが誰もいなかった。
さらに通り魔の事件の為に人通りがめっきり少なくなっていた。

めぐみはがっかりしたが勇気は内心ホッとしていた。
勇気は仕方なく付いて来たが怖くて帰りたくてしようがなかった。

「もういいだろう?誰もいないし帰ろうよ。」

「うーん、しようがないわね。でも明日もう一度来るのよ。」

「えええ、もういいじゃないか。もう気はすんだだろう?」

「何言ってるのよ。まだ何も見つけてないのよ。」

勇気はどう言えばめぐみがあきらめるのか考えていた。

その時だった。
公園の奥の木々の間から突然うわ~っという男の悲鳴が聞こえた。
めぐみは悲鳴の聞こえて来た方へ走った。



                   つづく