「雅人~。」

屋上は1メートルほどの柵で覆われていた。
その柵のそばに誰かが立っているのが見えた。

「雅人、何してるの?」

「・・・」

冴子は柵の前まで歩いた。
確かに人影が見下ろすように下を覗き込んでいた。

冴子は人影に向かって近づいていった。

「雅人。」

冴子は背中を見せたままの人影の背中をつかんだ。
そして力を込めて人影の身体を冴子の方に向けた。
人影の顔が月明かりの中に浮かんだ。

「まさ・・・と?」

「久しぶりね。冴子。」

振り向いた人影は恵子だった。
その恵子の声は電話をかけてきた信代の声にそっくりだった。

「け・・・いこ?電話してきたのはあなた?」

「そうよ。」

「恵子・・・」

「あなたで最後よ。これで4人そろうわね。」

「そろうって・・・」

「向こうで江梨子と信代と利恵が待ってるわ。」

「い・・・や。」

「そうよね。3人ともそう言ったわ。」

「・・・」

「でも3人とも行ってもらったわ。みんなあなたを待ってるのよ。あの時みたいに。」

「あの時って・・・」

「あの時よ。私を無理矢理ここから落としたじゃないの。あの時よ。」

「恵子・・・」

「私は中島先生が待ってるって聞いたからここへ来たのよ。でも中島先生はいなかった。
当然よね。中島先生は私がここにいる事も、あなたに呼び出された事も知らなかったんだから。」

「あれは江梨子がやったのよ。」

「うそ。知ってるのよ。江梨子に聞いたわ・・・

私に対するいじめは全部あなたの指示だったって。
江梨子に全部命令してたのはあなただった。

私もそれはうすうす感じてた。
でもどうしてなのか江梨子に聞くまでわからなかった。」

「何言ってるの・・・江梨子よ。江梨子が・・・」

「冴子、私あんな事したくなかった・・・」

江梨子の声が聞こえた。
冴子が振り向くと江梨子、信代、利恵が立っていた。



                     つづく