裕康たちは少しずつ後ろに下がって行く。
竜志が銃の引き金に指をかけた時だった。
数発の銃声がした。
「ううっ。」
竜志の腕があっという間に射抜かれて銃を落とした。
同時にすさまじい音がして倉庫の中にシャベルカーが突っ込んで来た。
運転席には野口がいた。
野口がシャベルカーから降りて来た。
それを見た男たち数人が野口の方に駆け寄った。
野口は身体を沈めたかと思うとアッという間に男たちを倒してしまった
緑川と腕を撃たれた子分たちがあっけにとられていると香織の声が響いた。
「そのまま動くんじゃないわよ。妙な事すると今度は腕だけじゃ済まないわよ。」
「くそっ、てめえ。」
香織が奥の木箱の陰から姿を現した。
昼間のお嬢様然とした香織ではなかった。
目つきも鋭い、美しいスナイパーがそこにいた。
その時、まだ無事だった残りの二人の子分たちがふところから銃を出し香織を撃った。
しかし既に香織は素早く身を翻し、倉庫に置かれた荷物の影に飛び込んでいた。
香織は木箱の陰から子分たちの足を撃った。
足を撃ち抜かれた子分たちは倒れたまま動けなくなってしまった。
「くそおぉ。覚えてろ!」
倉庫の床に倒れた子分たちが悔しそうにわめく声が響いた。
不甲斐ない子分たちを見ていた緑川の前に香織が姿を見せた。
緑川は香織に向かって言った。
「お前達は誰だ?警察か?」
「そうねえ、まあ正義の使者とでも言っておきましょうか。」
「なんだと!正義の使者だとぉ。バカにしやがって。」
「あなたも死にたくなかったらおとなしくした方が身の為よ。」
「なにい!」
緑川は銃を香織に向けた。
緑川が狙いを定める間も与えず香織は軽々とした身のこなしで素早く身体をひねった。
そして次の瞬間、緑川の顔に一発蹴りを入れた。
香織がのけぞった緑川にさらに2,3発蹴りを入れると緑川はひっくり返ってしまった。
「親分・・・・」
子分たちが倒れたまま呼び掛けたが緑川はびくともしなかった。
「チクショウ。」
ショベルカーから降りてきた野口は子分たちの前に来た。
その野口に向かって香織が言った。
「こいつら、縛って転がしときましょ。」
「そうだな。」
「瑠衣ちゃん。もういいわよ。出てらっしゃい。」
するとショベルカーの背後から、瑠衣が走って来て裕康に駆け寄った。
「裕ちゃん、大丈夫?」
「瑠衣・・・」
すると今まで裕康の隣にいた女性が立ち上がった。
瑠衣にそっくりなその女性は・・・いや、女性に見えるがよく見ると安永だった。
「安永さん、ありがとうございました。」
「いいえ。これぐらいどうって事ないわよ。」
「でも本当に男に見えない。こんなに近くで見てもわからないんだもん。すごい。」
「ふふっ。ありがとう。」
変装の名人、安永が瑠衣の身代わりを務めてくれたのだ。
安永は完璧な変装とそして声まで自由に操る事が出来る。
姿、声を瑠衣そっくりに変えてこの倉庫にやって来たのだ。
安永の技術があれば敵の目を欺く事など簡単な事だった。
しかし安永は言った。
「でも裕ちゃん、私の顔を見て変な顔したのよ。何か言い出さないかと思ってさすがにあわてたわ。」
裕康は瑠衣に支えられながら安永に頭を下げた。
「すいません。近くで見たら、瑠衣なんだけどどこか変だなと思って。つい・・・」
「ふふふ。まあしょうがないわね。これも愛の力かしら。今まで私の変装を見破ったのは室長だけなんだけど。」
瑠衣と裕康は顔を見合わせ照れくさそうに笑った。
「あはは。」
「ははは。」
香織と野口も近寄って来た。
「緑川組の方は片付いたわ。」
見ると緑川組の連中が縛られて床に転がっていた。
「もうすぐ警察も来るし、そろそろ失礼しましょうか。」
「うん。裕ちゃん、行くわよ。」
瑠衣は裕康を支えて歩こうとした。
すると野口が言った。
「僕が連れて行くよ。代わろう。」
しかし瑠衣は言った。
「いいえ、私にさせて下さい。」
野口は笑いながら言った。
「わかった。じゃあその役はお任せするよ。」
倉庫の外に出ると香織が言った。
「さあ後は室長の出番ね。」
つづく
竜志が銃の引き金に指をかけた時だった。
数発の銃声がした。
「ううっ。」
竜志の腕があっという間に射抜かれて銃を落とした。
同時にすさまじい音がして倉庫の中にシャベルカーが突っ込んで来た。
運転席には野口がいた。
野口がシャベルカーから降りて来た。
それを見た男たち数人が野口の方に駆け寄った。
野口は身体を沈めたかと思うとアッという間に男たちを倒してしまった
緑川と腕を撃たれた子分たちがあっけにとられていると香織の声が響いた。
「そのまま動くんじゃないわよ。妙な事すると今度は腕だけじゃ済まないわよ。」
「くそっ、てめえ。」
香織が奥の木箱の陰から姿を現した。
昼間のお嬢様然とした香織ではなかった。
目つきも鋭い、美しいスナイパーがそこにいた。
その時、まだ無事だった残りの二人の子分たちがふところから銃を出し香織を撃った。
しかし既に香織は素早く身を翻し、倉庫に置かれた荷物の影に飛び込んでいた。
香織は木箱の陰から子分たちの足を撃った。
足を撃ち抜かれた子分たちは倒れたまま動けなくなってしまった。
「くそおぉ。覚えてろ!」
倉庫の床に倒れた子分たちが悔しそうにわめく声が響いた。
不甲斐ない子分たちを見ていた緑川の前に香織が姿を見せた。
緑川は香織に向かって言った。
「お前達は誰だ?警察か?」
「そうねえ、まあ正義の使者とでも言っておきましょうか。」
「なんだと!正義の使者だとぉ。バカにしやがって。」
「あなたも死にたくなかったらおとなしくした方が身の為よ。」
「なにい!」
緑川は銃を香織に向けた。
緑川が狙いを定める間も与えず香織は軽々とした身のこなしで素早く身体をひねった。
そして次の瞬間、緑川の顔に一発蹴りを入れた。
香織がのけぞった緑川にさらに2,3発蹴りを入れると緑川はひっくり返ってしまった。
「親分・・・・」
子分たちが倒れたまま呼び掛けたが緑川はびくともしなかった。
「チクショウ。」
ショベルカーから降りてきた野口は子分たちの前に来た。
その野口に向かって香織が言った。
「こいつら、縛って転がしときましょ。」
「そうだな。」
「瑠衣ちゃん。もういいわよ。出てらっしゃい。」
するとショベルカーの背後から、瑠衣が走って来て裕康に駆け寄った。
「裕ちゃん、大丈夫?」
「瑠衣・・・」
すると今まで裕康の隣にいた女性が立ち上がった。
瑠衣にそっくりなその女性は・・・いや、女性に見えるがよく見ると安永だった。
「安永さん、ありがとうございました。」
「いいえ。これぐらいどうって事ないわよ。」
「でも本当に男に見えない。こんなに近くで見てもわからないんだもん。すごい。」
「ふふっ。ありがとう。」
変装の名人、安永が瑠衣の身代わりを務めてくれたのだ。
安永は完璧な変装とそして声まで自由に操る事が出来る。
姿、声を瑠衣そっくりに変えてこの倉庫にやって来たのだ。
安永の技術があれば敵の目を欺く事など簡単な事だった。
しかし安永は言った。
「でも裕ちゃん、私の顔を見て変な顔したのよ。何か言い出さないかと思ってさすがにあわてたわ。」
裕康は瑠衣に支えられながら安永に頭を下げた。
「すいません。近くで見たら、瑠衣なんだけどどこか変だなと思って。つい・・・」
「ふふふ。まあしょうがないわね。これも愛の力かしら。今まで私の変装を見破ったのは室長だけなんだけど。」
瑠衣と裕康は顔を見合わせ照れくさそうに笑った。
「あはは。」
「ははは。」
香織と野口も近寄って来た。
「緑川組の方は片付いたわ。」
見ると緑川組の連中が縛られて床に転がっていた。
「もうすぐ警察も来るし、そろそろ失礼しましょうか。」
「うん。裕ちゃん、行くわよ。」
瑠衣は裕康を支えて歩こうとした。
すると野口が言った。
「僕が連れて行くよ。代わろう。」
しかし瑠衣は言った。
「いいえ、私にさせて下さい。」
野口は笑いながら言った。
「わかった。じゃあその役はお任せするよ。」
倉庫の外に出ると香織が言った。
「さあ後は室長の出番ね。」
つづく