10人ほどだろうか・・・ガラの悪そうな男たちが姿を現した。
その中には例の二人組みもいる。
そしてその隣にはあのデパートにいた壇城を追っていた二人もいた。

さらに子分たちの後ろからもう一人、50がらみの脂ぎった男が出て来た。
この男が裕康の携帯電話からかけてきた男のようだった。

「あなたは誰?」

「うるせい!」
デパートで会った、二人組みの若い方が怒鳴った。

「竜志、よさないか。お嬢さんにはもっときれいな言葉を使え。」
緑川誠一だろうか・・・中年の男が怒鳴りつけた。

「すいません、親分。」

「あなたは緑川組の?」

「ほお、ご存知でしたか」
緑川がニヤッと笑いながら言った。

「親分、さっさと片付けちまいましょう」

「竜志。うるせい、黙ってろ!」

「へい。」
竜志という子分は緑川に叱られて、1歩後ろに下がった。

「あなたたちがあの壇城って人を殺したんでしょ?」

「違いますよ。あいつを殺ったのは俺たちじゃない。
内部告発しようと資料を持ち出した壇城ってのがバカな奴でしてね。同期の男に内部告発する事を漏らした。そいつが会社のスパイだと知らずにね。そいつが上手い事を言って、資料を取り上げようとしたんだが壇城に逃げられた。せっかくこっちで捕まえてやったのに。そいつが焦っちまってねえ。
壇城から資料のありかを吐かせようとしたが最後まで隠し場所を吐かなかった。
そのうちに極東のやつら、壇城をビルの屋上から突き落としやがった。
おかげで俺たちの手間が増えちまった。
俺たちだってこんな可愛いお嬢さんに怖い思いさせたくなかったんですがね~。こうなったらしようがない。
もういいでしょう。西森さん、そろそろ持って来た物を出してもらいましょうか。壇城ってやつから預かっている物ですよ。」

「これでしょ。」

目の前に差し出されたメモリーカードを見て緑川は言った。

「ほお~。これですか。これじゃあこいつらにはわからないはずだ。西森さんの家も探させて頂きましたが見つけられなかったのも無理はない。」

「残念だったわね。これは私がずっと持ち歩いてたんだから。」

「そうですか。とんだ無駄足だったというわけですか。まあ今となってはどうでもいい事ですがね。じゃあ、そいつを渡してもらいましょうか。」

「わかったわ。渡すから裕ちゃんを下ろして!」

「そいつを渡してもらえれば、いつでも下ろしてあげますよ。」

「だめよ。裕ちゃんを下ろすのが先よ。」

「ほお~。なかなか気の強いお嬢さんだ。いい度胸をしていらっしゃる。立派なもんだ。こいつらに爪の垢でも煎じて飲ましてやりたいぐらいだ。いいでしょう。お嬢さんの度胸に免じて恋人を下ろしてあげましょう。おい!下ろしてさしあげろ。」

「へい。」
子分たちが裕康を下ろした。

「裕ちゃん、しっかりして。」

「ううぅ。」
裕康はやっと気がついたが、自分を見ている視線に気づきじっと見ていた。

「・・・あの・・・」

「大丈夫?裕ちゃん。心配したのよ。良かった・・・無事で。」

緑川はその様子を見ていたが、待ちくたびれたのかイライラした様子で二人に向かって言った。
「もういいでしょう。さあ早くそいつをいただきましょうか。」

「わかったわ。」
そう言ったかと思うと、手の中にあったメモリーカードを投げた。

「おっと。」
緑川は目の前に落ちたメモリーカードを拾い上げた。

「さあ、これでこいつらに用は無い。おい、お前ら片付けろ!」

「へい。」

竜志が銃を手ににじり寄り、二人に狙いを定めた。


                  つづく