その時ガチャッとドアの開く音がして、野口が戻って来た。
「室長、帰りました。」
「うん、ご苦労さん。どうだった?」
「はい、ちょっと込み入った事になっています。どうやら緑川組が動いているようです。」
「緑川組か・・・やっぱりあの噂は本当だったのか。橋口と緑川誠一とのつながりは前から裏の世界では囁かれていたからな。」
「はい。今度の件も橋口と緑川、それに極東商事がつるんで、始めた武器輸出が原因のようです。」
「ふん、つまらん事ばかり、やりやがって・・・」
「はい、橋口と緑川組のつながりは、橋口がまだ県会議員の頃からですね。地元で起こった大手スーパーの誘致の際、かなり強引な手段で地主から土地を取り上げています。その時なかなか言う事を聞かなかった地主を脅して土地をただ同然の安い金額で買い取っています。その手先として使ったのが緑川組、そしてその誘致運動の旗頭だったのが橋口だったというわけです。」
「うん・・・」
「それから緑川誠一の兄貴分で、迫田宏という総会屋が極東商事に食い込んでいまして。そのつながりで橋口や緑川と極東商事が結びついたようです。」
「ふん、下司野郎どもが。」
田村は苦々しげに、言い放った。
田村は苦々しげに、言い放った。
「まったく。こいつら、手を組んで今まで相当あくどい事をやって来てます。そうやって集めた金で橋口は今の地位を手に入れたんですからね。ひどいもんですよ。」
「すると瑠衣ちゃんの持って来たメモリーカードの出どころは?」
「極東商事の社員からやっと聞き出したんですが、やはり内部告発のようです。自殺したと言われている例の壇城という社員が持ち出したらしいんですが、その証拠を隠滅する為に橋口が緑川組に命じて壇城を始末させたというのが真相のようです。しかし肝心のその証拠を壇城は逃げる途中でどこかに隠した。緑川組はその証拠を探すのにやっきになっているそうです。」
「そりゃあ、これがもし世間に出れば橋口も極東商事も一蓮托生だ。橋口の野望も終わりだからな。必死になって取り戻したくもなるだろう。」
「橋口たちは自殺として処理してしまいたいと思っているでしょうが、こっちには証拠がありますからね。」
「しかしそれだけに瑠衣ちゃんの彼氏は相当危険だな。」
黙って二人のやり取りを聞いていた瑠衣はたまらず叫んだ。
「お願いします。裕ちゃんを助けて下さい。裕ちゃんに何かあったら私生きて行けません。」
「いいよな~。瑠衣ちゃんにここまで思われて。」
そう言って笑った田村の目が、キラリと光った。
そう言って笑った田村の目が、キラリと光った。
「大丈夫よ、瑠衣ちゃん。室長に任せておけば。必ず彼を助け出してくれるから。」
牛島洋子が瑠衣の肩をそっとたたいた。
牛島洋子が瑠衣の肩をそっとたたいた。
そして、翌日。
夜十時埠頭の第3倉庫のドアが開けられた。
倉庫の中は暗かった。
夜十時埠頭の第3倉庫のドアが開けられた。
倉庫の中は暗かった。
「誰か、いますか?」
震える声が倉庫に響いた。
すると灯りが突然点いて天井からぶら下げられた裕康が見えた。
すると灯りが突然点いて天井からぶら下げられた裕康が見えた。
「裕ちゃん!」
裕康は口の端から血を垂らしていた。
その血は乾いていたが、意識はないようだ。
裕康は口の端から血を垂らしていた。
その血は乾いていたが、意識はないようだ。
「出て来なさいよ。」
倉庫中に声が響いた。
その時コツコツと乾いた音がした。
倉庫中に声が響いた。
その時コツコツと乾いた音がした。
「西森さん、やっとお会い出来ましたね。」
つづく