翌日瑠衣は昨夜の二人が気になっていたが、仕事をしているうちにそれも少しずつ忘れかけていた。
だが3時過ぎ、仕事の為外出していた瑠衣にマンションの管理会社から電話が入った。
会社に電話したらしいがいなかった為携帯電話にかけてきたのだ。

「西森さん、実は今日の昼過ぎに警察から電話が有りまして。お宅に空き巣が入ったらしいですよ。」

「ええっ!空き巣?」

「ええ。お宅の部屋のドアが開いてたんで隣の部屋の方が通報してくれたんですがね。ちょっと帰って来てくれませんか?今警察が来て現場検証してるんですよ。なくなっている物がないかどうか見ていただかないといけませんし。」

「わかりました。すぐ帰ります。」
瑠衣は会社の上司に事情を話し、大急ぎで帰宅した。

マンションに帰ってみると瑠衣の部屋は悲惨な状態だった。
足の踏み場もないほどあらゆる物が散乱していた。
引き出しも全て開けられ、ベッドのマットレスもクッションも切り裂かれ中身が引き出されていた。
何がなくなっているのか見当もつかない有様で瑠衣はショックのあまり床の上に座り込んでしまった。

今朝出かける時に確かに鍵はかけて行ったはずだ。
例の二人組みの事もあり、今朝は特に出かける時に注意して戸締りは神経質なほど確認した。
瑠衣は玄関に行きドアを見た。
見ると鍵を壊して侵入したらしくドアノブはグラグラになっており、ドアノブの周りに幾つもの傷跡が残っていた。

警察に事情を聞かれた後、夕方になってようやく解放された。
自宅に戻っては来たが気味が悪く落ち着かなかった。
この2日の間に起こった事に瑠衣は混乱していた。
テレビドラマの推理物に出てくるように部屋中を捜しまわったようなのだ。
警察もただの空き巣にしては探し方がおかしいという事で、瑠衣にも心当たりがないか聞いていた。

「どうして・・・私の所に何があるのよ?」
そうつぶやいた瑠衣はようやく3日前のデパートでの出来事を思い出していた。

「えっ。もしかしたらあれ・・・かな?」
あの時渡されたチョコレートらしき包みの事を思い出した。
瑠衣はバッグの中に入れたままになっていた小さな箱を探した。
あの小さな箱はバッグの脇に突っ込んであった。
箱を取り出し手に取った。
10cm角の小箱に有名なチョコレートメーカーのブルーのおしゃれな包装紙にピンクのリボン。

瑠衣はその小箱を軽く振ってみた。
小さな箱は、カサカサと軽い音がする。
何か入っているようだが、チョコレートにしては少し軽いような気がした。

瑠衣は思い切って箱を開けてみる事にした。
リボンをはずし、包装紙を破ると白い箱が出てきた。
そして小さな蓋を開けると中にはラッピング用の紙を細かく刻んだ中に小さな3cmくらいのカードがあった。

「えっと、これ確か・・・」
思いついた瑠衣は、を探した。
本や小物が散乱している下の方からやっとデジタルカメラを見つけた。
カメラの電源を入れると、入れてあったはずの瑠衣のカメラの中のメモリーカードは無かった。
瑠衣は小箱の中に入っていたメモリーカードを自分のカメラに挿入した。
カメラの液晶画面で確認すると写真や書類らしき物が写っている。

「何だろう?これ・・・なんの写真かな?それになんの書類かな?」
その書類には文字や数字が並んでいるようだったがカメラの液晶画面では内容までは見る事が出来ない。

「そうだ、これパソコンで見ればいいんだ。」
瑠衣はカメラのデーターをパソコンで確認する事にした。
やがて瑠衣のパソコンにカメラの映像が取り込まれていく。
中には何枚かの書類を写した物と人物が写っていた。

「誰だろう?」
写っているのは3人の男達だ。
料亭の前で何か話しているらしい。
次の写真を見た時、瑠衣はハッとした。
さっきの3人のほかに写真の端に昨日瑠衣のマンションの前にいた例の二人組が写っていた。


                 つづく