仕方なく瑠衣はその包みをショルダーバッグの中に入れ、陳列されているチョコレートを見始めた。
色、形さまざまなチョコレートが宝石のようにガラスケースの中に並んでいる。
瑠衣は「おいしそう。」とつぶやきながらケースの前にしゃがみこんでチョコレートを見つめていた。

すると柄の悪そうな男が二人小走りにやって来るのが見えた。
男たちは売場の中をきょろきょろと見渡し、何か探しているようだった。

その様子を見ながら、瑠衣はなぜかドキドキして来た。
瑠衣は男たちから見られないようにチョコレートの陳列台の間に隠れこっそりのぞいた。

その時、瑠衣と男達の一人と目が合った。
瑠衣はビクッとして、固まったように動けなくなってしまった。

やがて男が瑠衣の方へ一歩踏み出した。
そして瑠衣に向かって歩き出そうとした時、もう一人の男が近寄って来た。

「兄貴。」

「何だ?竜志。」

「向こうの階段の方に男が一人走って行ったそうですぜ。早く追かけましょう。もし逃げられたら今度はこっちが危ないですぜ。」

「よし。わかった。」
男は瑠衣をもう一度ちらっと見たが、もう一人の男と一緒に走って行った。

二人の姿が消えるのを確かめた後、ようやく瑠衣は息を吐いた。

「ああ~怖かった。」
肩から力を抜いた瑠衣は、ぐったりと疲れている事に気づいた。

瑠衣が売場の隅の柱にもたれていると裕康が戻って来た。

「何してるんだ?行こうよ。」

「うん・・・」

「何?どうかした?」

「ううん、何でもない。行こうか。何か食べよう。お腹空いちゃった。」
瑠衣はいつの間にか抱え込んでいたバッグを肩に掛け歩き出した。
その時瑠衣のバッグから会社の名前が入った封筒がバサッと落ちた。

「あ、いけない。」
瑠衣は封筒を拾い、手でパタパタと汚れをはたいた。

「これ、明日直行して届けなきゃいけないんだ。」
瑠衣は再び封筒をバッグにしまい込んだ。
瑠衣と裕康は階段ではなくエレベーターへと向かった。

二人は時々行く寿司屋に行く事にした。
この店の主人の名を金太と言う。
金太はつるつる頭に豆絞りの手ぬぐいをきゅっと巻いた粋な姿で店に立っている。
銀座の有名な寿司屋で修行したとかで、腕は確かだった。

裕康は接待で初めて行ったが、味の良さに通いつめた。
味は抜群だが値段はそれほどでもなく、裕康でも月に2度ぐらいは行く事が出来た。
瑠衣の機嫌を損ねてしまった裕康はここへ連れて来たのだ。

だが二人を追って、店の外にさっきの男たちがいる事を瑠衣も裕康も知らなかった。


                 つづく