「パパ、チョコレートいる?」

瑠衣は夫と娘と3人でデパートに来ていた。
まだ1月だというのにデパートの入口中央の目立つ場所に、バレンタインデーのためのカラフルな包装紙に包まれたたくさんのチョコレートが並んでいる。

「う~ん。・・・」

いつものように裕康(ひろやす)は今ひとつはっきりしない返事をしながら、チラッとチョコレート売場を横目で見ながらのんびりと歩いて行く。

「もうっ!パパったら。いつもこうなんだから。チョコレートいらないなら、もうあげないからね!」
瑠衣はそう言いながら以前にも同じような会話を交わした事を思い出していた。

あの時もやはり、こうしてチョコレートを見つめていた。
だがあの頃はまだ裕康は恋人にしか過ぎなかった。
それも少し頼りなく、瑠衣には物足りささえ感じる事が度々あった。
あの事が無ければ瑠衣はまだ結婚したかどうか、まして母になる事も無かったかもしれない。




あれは3年前の寒い日だった。
1月も過ぎ、2月に入ったばかりの頃・・・
その冬は寒さが厳しく東京には珍しく大雪が降った。

裕康とのデートも裕康が寒がりだった為室内で過ごす事が多かった。
瑠衣は寒がる裕康を無理矢理引っ張り出し買い物に付き合わせたのだった。

瑠衣と裕康はデパートの1階にいた。
デパートの入り口を入るといつもは食品売場なのだが、今はたくさんのチョコレートが並んでいた。
バレンタインデーにはまだ間があったが10代から20代の女の子達や結構年配の女性達が、ガラスケースのチョコレートを見つめあれこれと品定めをしていた。



                 つづく