死にたい男がいた。
男は私に言った。

「一緒に死んでくれないか・・・もう何もかも嫌なんだ。死にたいんだ。」

私は死んでもいいと思った。
「いいわよ。一緒に死んでも。」

男はうれしそうに言った。
「うん。死のう。おまえと一緒なら死ねそうだ。」

男は布団の中から手を伸ばし私の胸をまさぐった。
私はうれしかった。体を起こし男の足に私の足を絡ませた。


梨絵が男と遭ったのは社用の途中に立ち寄った喫茶店だった。
テーブルの上に書類を広げ何か考えていた男はテーブルの上のコーヒーをひっくり返してしまった。
男は慌てたがナプキン1枚ではとても足りず上着のポケットを探していた。
梨絵は自分のティッシュを差し出した。

「どうぞ」

男は受け取り汚れた書類を拭き、梨絵に言った。
「ありがとう。お急ぎですか?良かったらなにかお礼をさせて下さい。」

「いいえ、たいしたことじゃありません。」
梨絵は店を出た。
男は梨絵を追いかけて走って来た。

「お願いします。食事をおごらせて下さい。」

「わかりました。それじゃお言葉に甘えさせていただきます。」


2日後、男と梨絵はレストランにいた。
薄暗い店内にテーブルがあり、キャンドルの淡い灯りが梨絵の顔を照らしていた。

「君に会えて良かった。僕は君をずっと探してたんだ。やっと見つけたんだ。」

男はそう言って梨絵の手に自分の手を重ねた。


男はいつも梨絵と会っている時はとても優しかった。
食事をしてホテルに行く・・・というコースがいつものパターンだった。

男はホテルのエレベーターに乗るとすぐに梨絵の胸にさわった。
梨絵はされるがままにしていた。

1ヶ月ほど経った頃から男は死にたいと言うようになった。
梨絵はそんな男が愛しくてたまらなかった。

二人は抱き合いながら泣いた。
男も梨絵もなぜ涙が出るのかわからなかった。


                   つづく