毬子は考えていた。
どうして女優になる夢を忘れていたのだろうか・・・
高校生の頃、夢見ていた・・・
毬子は中学生の頃から女優に憧れていた。
学校の演劇部で主役もやっていたし、将来は東京へ出て女優になろうと思っていた。
両親には内緒で、大学に通いながら小さな劇団にも入っていた。
しかし大学を卒業する頃には芝居の才能が無い事に気づき今の会社に就職した。
あれから12年、女優という夢を持っていた事さえ忘れていた。
あの頃は毎日が楽しくて仕方がなかった。
劇団の練習は厳しかったが1日、1日が張りのある毎日だった。
そう、あの頃は目標があった。
通行人の役ばっかりだったがいつか舞台の真ん中に1人で立ち、スポットライトを浴びる日を想い描きながら精一杯過ごしていた。
そういえばいつの間にか「しようがないじゃない・・・」が口癖になって全てをあいまいにしたまま生きて来た。
劇団を辞めて就職してから1度だけ公演を見に行ったことがあった。
客席から舞台を見ながらなぜか涙が止まらなかった。
舞台に立っているかつての仲間がうらやましかったのか・・・あきらめてしまった自分が許せなかったのか・・・
あと3日で約束の日だ。
金曜日の夕方・・・
毬子は劇団へ向かっていた。
毬子の手は携帯電話を握りしめていた。
その携帯電話には死神からの期間満了を知らせるメールが届いていた。
古ぼけたビルの3階、薄暗い階段を上りドアを開けると懐かしさが胸の中一杯になった。
ああ~この匂いだ。
埃っぽいような独特の香りが毬子の全身を包んだ。
部屋の中を見るとあの頃の毬子と同じ年頃の若者が何人も演出家から注意を受けている。
そしてどの顔も輝いていた。
「私もあの頃こんな顔してたんだ・・・」
毬子はつぶやいていた。
毬子がいた頃から比べると、かなり老けた演出兼団長が振り向いた。
「・・・おっ、えーっと・・・ひょっとして毬子か?毬子だよな。すげえ久しぶりだな~何してるんだよ。入って来いよ。」
「覚えててくれたんですね。」
「当たり前じゃないか。俺は劇団員の顔は忘れないんだ。おーい、みんな昔うちにいた毬子だ。ええ~と毬子、苗字なんだっけ?」
「進藤毬子です。よろしく。」
つづく
どうして女優になる夢を忘れていたのだろうか・・・
高校生の頃、夢見ていた・・・
毬子は中学生の頃から女優に憧れていた。
学校の演劇部で主役もやっていたし、将来は東京へ出て女優になろうと思っていた。
両親には内緒で、大学に通いながら小さな劇団にも入っていた。
しかし大学を卒業する頃には芝居の才能が無い事に気づき今の会社に就職した。
あれから12年、女優という夢を持っていた事さえ忘れていた。
あの頃は毎日が楽しくて仕方がなかった。
劇団の練習は厳しかったが1日、1日が張りのある毎日だった。
そう、あの頃は目標があった。
通行人の役ばっかりだったがいつか舞台の真ん中に1人で立ち、スポットライトを浴びる日を想い描きながら精一杯過ごしていた。
そういえばいつの間にか「しようがないじゃない・・・」が口癖になって全てをあいまいにしたまま生きて来た。
劇団を辞めて就職してから1度だけ公演を見に行ったことがあった。
客席から舞台を見ながらなぜか涙が止まらなかった。
舞台に立っているかつての仲間がうらやましかったのか・・・あきらめてしまった自分が許せなかったのか・・・
あと3日で約束の日だ。
金曜日の夕方・・・
毬子は劇団へ向かっていた。
毬子の手は携帯電話を握りしめていた。
その携帯電話には死神からの期間満了を知らせるメールが届いていた。
古ぼけたビルの3階、薄暗い階段を上りドアを開けると懐かしさが胸の中一杯になった。
ああ~この匂いだ。
埃っぽいような独特の香りが毬子の全身を包んだ。
部屋の中を見るとあの頃の毬子と同じ年頃の若者が何人も演出家から注意を受けている。
そしてどの顔も輝いていた。
「私もあの頃こんな顔してたんだ・・・」
毬子はつぶやいていた。
毬子がいた頃から比べると、かなり老けた演出兼団長が振り向いた。
「・・・おっ、えーっと・・・ひょっとして毬子か?毬子だよな。すげえ久しぶりだな~何してるんだよ。入って来いよ。」
「覚えててくれたんですね。」
「当たり前じゃないか。俺は劇団員の顔は忘れないんだ。おーい、みんな昔うちにいた毬子だ。ええ~と毬子、苗字なんだっけ?」
「進藤毬子です。よろしく。」
つづく