毬子は携帯電話をバッグから取り出すと、懐かしい相手に電話をした。
学生の頃の恋人だった裕二だった。

毬子が大学に入って、すぐに裕二と知り合った。
裕二はハンサムというわけではなかったが、裕二は人当たりがよく一緒にいるとホッとするような人柄だった。
少しせっかちな毬子とはいいコンビだった。

大学を卒業してからもしばらくは付き合っていたが、先輩や上司を見るにつけ裕二に物足りさを感じ始めた毬子は次第に裕二との距離を開けるようになった。
そんな毬子の気持ちを察したのか裕二は自分から連絡してこなくなった。
自然に二人は会わなくなっていった。


「もしもし・・・」

「はい。秋元です。」

「裕二?私、毬子。元気?」

「ああ~。毬子か~。久しぶりだな~。お前こそ元気か?」

「うん。元気・・・かな。」

「何だよ、それ。」

「あはは。元気よ。ねえ、時間ないかな?久しぶりに会いたいんだけど。」

「そうだな・・・明日の夜ならいいよ。」

「じゃあ、昔よく行ったあのレストランで7時に待ってる。」

「おう、わかった。じゃあな。」



「待った?」

「いや、俺もさっき来たところ。しかし、久しぶりだな~」

「ほんとね。ここも懐かしい。」

「うん。」
毬子は少し古びた店内を見渡した。
テーブルクロスは変わっていたが椅子やテーブルはそのままだ。

「懐かしいな~。ここよく来たな~。」

「うん。バイトの給料が入った時だけね。ふふ。」

「そうそう。あの頃、金無かったし。」

「ほんと。」

「それで毬子は今どうしてるんだ?」

「うん。ずっと今の会社よ。」

「そうか。頑張ってるんだな。」

「まあね。裕二は?」

「俺は、友達と会社起上げたんだ。まだ小さい会社だけどね。」

「ええ~そうなんだ。すごいね。頑張ってるのね。それで結婚は?」

「ああ、5年前にしたよ。3歳の女の子がいるんだ。」

「へえええ。裕二がパパか~。」

「ははっ。」
毬子は裕二と話しているうちに幼友達のような感覚になっている自分に気づいた。

「毬子。女優になるってあの頃言ってたよな?」

「ああ~、そうだった。私劇団に入って女優目指してたのよね。」

毬子は忘れていた夢を思い出した。


                   つづく