森崎史郎はある日、部長から呼ばれた。

「森崎君、君に頼みがあるんだがね。○○市にあるうちの営業所を知ってるね?」

「はい、知っています」

「この春に営業所に転勤になった高野君が1ヶ月前から行方不明になってしまってね。営業所でも困っているんだよ。君、しばらくの間すまないが営業所に行ってくれないか」

「えっ?」

「もちろん当座の事でずっとっていう訳じゃないよ。今進めてる契約の話がうまくいけばまた本社へ呼び戻すから、頼むよ。」

「そうですか・・・わかりました。それでいつ向こうへ行けば?」

「急かせて悪いが来週からでも行ってほしいというのが上の意向なんだ。」

「そうですか。では来週から行きます。」

「もう一つ、言っておかなければいけないんだが・・・いや、やめておこう。私の思い過ごしかもしれない・・・。」
部長の歯切れの悪い口調が少し気になったがサラリーマンにとって転勤は付き物である。
断る事など出来るわけもなく史郎は週末に赴任した。


史郎が営業所へ転勤してから1週間経った。
得意先へのあいさつ廻りでこの1週間は過ぎてしまった。
営業所のみんなともゆっくり話す機会もないまま時間が過ぎていった。

ただ史郎には気になる事があった。
はっきりとここがおかしいという事ではないのだが、なにかしっくりと来ないのだ。

強いて言えば営業所のみんなの眼だった。
みんな端正な顔立ちで表情もあまり変わらない。どちらかと言うと冷たいというより無表情に近いのだ。

ある日、史郎が外出先の都合で予定より早い時間に戻ってきた事があった。
その時の史郎を見た時の眼がみんな同じ眼だった。
端正な顔が凍ったように固まり、眼には感情がなかった。
史郎はその眼を見てぞっとして肌がそそけ立つようだった。


                     つづく