ショックは受けたけど、女の人が言ってることは正しい。さっきの人がいつ来るかなんてわからないけど、目撃者は多分、殺される。
ついていくしか、ないようだ。
既に歩き出していた女の人の後を追う。女の人はピョコピョコと音が出そうなぐらいのテンポで歩いていく。身長は大きめなんだけど、歩き方がかわいいせいか、ちょっと小さく見える。肩から頭の上に移動した子羊のお蔭でもあるかもしれないけど。自然と小さく笑っていた。
さっきまで多少の恐怖があったのに、もう完全に収まっている。ちょっとあり得ないぐらいだ。また、あの人が襲ってくる可能性は大だというのに、自然とそこのとへの恐怖はない。
「電車乗るけど、大丈夫?」
少し考えてから、頷いた。
■ ■
金髪碧眼の、多分イタリア人。が、何かしらを怒鳴っているが、耳を塞がれているせいでまったく聞こえない。ちょっと聞こえそうになると、強い力で耳を押さえつけられ、痛みに唸ってしまうせいでやっぱり聞こえない。隠されていない目だけで、今の状況を説明すると、
二人の男の人が、オレを連れてきた女の人をどんな理由かはわからないが叱り、二人の男女がそれにやんやとちょっかいを出し、一番年下らしい女の子が、聞かれたくないのか、オレの耳を手で塞いでいる。
なんで、こうなったのかは、オレもわからない。見ていてもわからないから、ここまでの道を思い出してみることにする。
電車に揺られ、ついたのは新宿だった。女の人に腕をまだ掴まれたまま、ついたのはいわゆる高級マンション。普通のマンションも綺麗だが、このマンションはより綺麗で、それに驚いている暇もなく、ついたのは最上階。エントランスだけでも広かったというのに、最上階は一部屋扱いになっているようで、さらにデカかった。またもや腕を引かれ、中に入ると、
銃弾が飛んできた。
叫ぶことすらできず、恐怖で体を震わせるオレを横に、女の人はケラケラと笑って、頑丈に出来ていたらしいドアの下に落ちた銃弾を拾い上げ、それを、思いっきり投げた。投げられた弾丸はどこかにぶつかったのか鈍い音が聞こえてきた。それに驚くことしかできず、変わらず震えていたオレが次にみたのは、拳銃を手に持った、外国人だった。
今、女の人を怒ってる金髪の外国人。その後ろでなだめながらも、女の人を叱る男の人は、一目でわかる日本人。ちょっかいを出している男女も、多分日本人。そして、オレの耳を未だ塞いでいる女の子も、日本人、だと思う。オレを連れて来た人も瞳以外を見れば、日本人、だと思うから、外国人は彼一人だろう。
それよりも、銃弾か。
飛ばしてきたのは、その外国人、らしい。女の人がリビングに入った途端にそういっていた。
まだ、耳から手を離される気配がなく、話も終わるような気配が見えない。こっそりと溜息を吐くが、やっぱり手が離れない。ずっと同じ体制で座っているせいで、疲れてきた。どうにかならないかと、手を前に出して伸びをしてみるが、うん、離せてもらえない。
「……疲れた」
と、小さい声が聞こえたと思うと、あっさりと手を離してもらえた。耳を押さえつけられてたのに聞こえたのは、近かったからかな。
女の子の声に反応したのか、三人も言い合いを止め、楽しそうに笑いながらちょっかいを出しているように見えた男女もつまらなそうな顔をしたが、大人しくなった。
「ユキに救われたな、モカ」
「その言葉! えっと、そのまま? あれ、でもそのまま返したら私の名前じゃね? んん?」
「そこらへんは気にしなくても大丈夫だ。相手が意味わかってりゃ伝わる」
「この人、どうするの」
「食べ損ないだろー? こいつ、あいつらの」
「逃げてきたんだもんねー、モーちゃん」
オレを放っておいて、話を進めているけど、関われるような感じはしないから、黙って聞いておく。
「こいつエサにしたら捕まると思うから、しばらく確保」
「エサって……!」
黙っておこうと思ったのに、つい声を出してしまった。でも、仕方ない。エサだなんて言われて驚かないほど、落ち着いている訳じゃないから。
「大丈夫大丈夫、守ってあげるから。ちゃんと守れるかはわからないけどね」
次に言われた言葉に、何も言えず、黙ったけど、じっと全員に見られて、耐え切れず承諾してしまった。にっこりとした笑みを浮かべた、女の人が短く、名を名乗った。
「私は、モカ。桃咲桃叶(ももざきもかな)」
それに続けて、他の人も名を名乗ってきた。
「コルドだ。ザジョーナ・コルド」
「俺は、後藤久透(ごとうくずき)。しばらくの間だけど、よろしく頼むよ」
「ユキ……です」
「ロウだー」
「キウだよー」
全員に名乗られ、これは名乗らなきゃと、口を開いた。
「佐藤守遥(さとうすばる)、です」
あっふー(-。-;)