さて、大学に入学して照明と出会いようやく将来の目標が定まった、というところまでお話しいたしました。

 

実際には2年生までは教養課程なので、照明工学研究室に所属したのは3年生になってから。

また、3年次には待望の『照明工学』(選択科目)の講義が始まりました。

担当教授は、渡辺雅夫先生です。

 

 

照明工学は大きく分けると4つの分野で構成されています。

・光のこと(電磁波)

・視覚のこと

・ランプや点灯装置などの照明システムのこと

・照明計画と照明計算

 

ということで、今日は本邦初公開!

当時のノートをちょっとだけご覧ください。




私、この講義に懸けていましたから、毎回が真剣勝負でした。

一字たりとも間違うまい、そして、長くこのノートを使うのだからと万年筆で板書を書き写していたのです。

もちろん、先生の仰ることを一言も漏らすまいと耳はダンボのように大きくしていましたし、居眠りもしませんでした。

というよりは、不思議と睡魔に襲われることは一度もなかったのです。

但し、照明工学の授業だけですよ!

他の講義の受講態度は推して知るべし…汗

気持ちの持ちようでこうも変わるものかと、自分でも驚きます。(笑)

 

 

ノートをご覧になってお気づきになるかと思いますが、渡辺先生は大変几帳面に板書をされます。

他の教科には、教科書をボソボソと読んでいたかと思うと、いきなり回路図や数式を黒板に書きなぐるような先生も少なくありませんでした。

そんな点でも渡辺先生の講義は特別でした。

 

学校の講義や私が主宰する講座を受けられた方はお気づきになったかもしれません。

私の講義資料とこのノートは良く似ていると思います。(尤も、多少アレンジを加えていますから、全く同じではないのですが…)

実は私の講義スタイルの原点は、ここなのです。

 

例えば、我々は理系数学を学んできているので、何かの定義に対し公式を示して

「…故に☓☓~△△までの積分を求めて…」

というように表面的に説明をされるだけでも一応は理解できます。

しかし渡辺先生は数式とグラフを板書し、さらに口頭で細かい説明を加えて、徹底して具体的な解説をされていくのです。

だから、非常によくわかる! 理解が深い!

「ああ、こういうことだったのか!!!!!」

と腹にストンと落ちる。

恐らく数式でサラッと説明される場合より、数倍は理解の深度が違っているでしょう。

 

 

今、私も教える立場になって心掛けていることは、『具体的に説明する』ということ。

光は目で直接捉えることが出来ません。

ですから、光(=目で見えないもの)の性質や特徴、状態を理解してもらうために、とにかく言葉を尽くして解説します。

相手が理解できたと感じとれるまで、何度でも言いますし、言い換えをしたり、比喩をつかったりあの手この手を繰り出します。

ここが、照明教育の難しいところであり、創意工夫をする面白さでもあります。

 

今思えば、渡辺先生に教えていただいた経験がお手本になっているのですね。

今でもこのノートはすぐ手に取れるところにあって、いつでも気になることがあると目を通しています。

 

 

さてこの照明工学、学問としてはかなりの部分が技術的な内容になっています。

しかし実際には照明は、私達が生活や活動を通じて「見る」という行為を助けるために必要不可欠のものですよね。

ですから照明には、人間の生理や心理との関わり、さらには美的な要素が求められることもあります。

 

前回お話ししましたように、私はずっと家の中のことや身の回りのことが好きで、インテリアや工業デザインにも興味がありました。

そのようなことから、勉強してきた『技術的な事柄』と『人間との関わり』それに興味がある『デザインの要素』を組み合わせたような、あるいは取り持つような照明の仕事は出来ないものかと、漠然とした希望を持ち始めたのです。

 

私の就職活動期は、折しもバブル経済期の真っ只中。

工学部の女子学生なんて引く手数多でほうぼうからラブコールを頂戴したものです。

(振り返ると、これが私の人生最大のモテ期でありました…涙)

面接にうかがった照明メーカーで「どのような仕事をしたいのか」と訊ねられた私は、「ハード(技術)とソフト(生理・心理とデザイン)を取り持つような仕事をしたい」と意気揚々と答えます。

しかし返ってくる答えは「そんな仕事無いなぁ~」というものばかり。

どうやら、希望する仕事はどこにも無いようなのです。

引く手数多なのに…

就職活動が暗転します。

 

(つづく)