2020年7月頃。

標的は、私になってきた。

 

「あなたが盗撮しているんでしょ」

「あなたが私を見張っているんでしょ」

と普段通り会社にいっており、家でもこれまで通りの生活を

していたのにも関わらずなぜは標的は私に向けられる。

 

「そんなことするはずがない」

「何にためにそんなことをする必要があるのか」

と妻を安心させようとしても彼女はそれを信じない。

 

それは、

 

彼女の頭の中に、この世には存在しない別の人がおり、その人が私のことを語りかけているからだ。

統合失調症は怖い。客観的にはありえないことでも本人にとってはそれが真実になってしまう。

より具体的に内容が聞こえることや、実在する人の声が聞こえることによって、ありえないことが

彼女の頭の中では真実になっている。

 

そして、それが病気のせいでないと本人が思っているのでさらに難しい。

自分の中でそのようなことが起きているにも関わらず、なぜあなたは本当のことを

言わないのかとイライラが募る。もちろん真実ではないので、本当のことを私に話せと

言われても正直何を話したら良いのかわからない。

 

「私は何もしていないよ。」

「何で私のことを信用できないのか。」

と一生懸命彼女に語りかけたところで無理であった。その時は少し納得したとしてもすぐに存在しない誰かが彼女にやってくる。

 

私は、この時、たくさん泣いた。

何でこんなことになってしまうのか?何で私のことを理解してくれないのか?

彼女が好きであるが故に、彼女がこのようになってしまった事実をなかなか受け止めることが出来ない。

 

そして真面目に話し合いを続けるも、最終的には喧嘩になってしまう。

私も、その時はまだ病気であることを私自身が認識していなかったことから、

彼女の気持ちをうまく汲み取ってあげることが出来ず、言い返してしまう。

それが、さらによくなかったことが今となって反省。一生懸命に言ったところで、

彼女は今までの彼女ではない。見えている世界が違うのだがらわかるはずがないのだ。

 

その喧嘩を子供が近くで見ていて一緒にいつも泣いてしまう。

子供は何も悪くないのに。子供はいつも近くにきて、抱きつき

「家族で住みたい。」「喧嘩しないで」と言っている。その通りだ。私もそう思っている。

子供はこの喧嘩を見て、自身が泣いて、疲れて寝てしまう。この繰り返しだ。

 

私自身もこれが子供にとって良い環境ではないことと、

彼女が病気であることを認識していないことから、これからのことを真剣に考えないと思った。

もしかすると、離れ離れになるかもしれない。そのほうが良いのかもしれない。

と心のどこかで考え出した時だった。

 

でも、どんなに喧嘩しても彼女は夜のベットで「ごめんね」と呟く。

「私ダメだわ」「子供に悪影響だわ」と落ち着くと認識する。

そして二人で手を繋いで寝るという日々が続いた。