頭が痛い。目を開けた、眩しい光が眼球を刺してくる。頭の痛みが少し和らいだ気がした。まだ光に慣れていない目を擦って視界を確保する。
目の前には君がいた。愛しい愛しい君が心配そうに覗き込んでいた。ホッとした。君の名前を呼ぶと君は泣き始めた。
「よかった、やっと、目を覚ましてくれた」
私の胸の上で泣きじゃくる君の頭を撫でながらふと思った。
ここはどこだろう。
あれ?そういえば私の名前はなんだっけ?
必死に思い出そうと頭を働かせる。鈍痛が脳内に響く、その痛みで考えるのを躊躇う。考える、響く、躊躇う。
そんなことを繰り返していたら身体の上から重みが離れていく感覚がした。落ち着いた君が私から離れていく感覚だった。
私は聞く。ここはどこだろう、君のことは覚えているんだけれども、残念なことに自分の名前を覚えていないみたいだ、教えてくれないか?
君は悲しそうな顔をした。そして教えてくれた。
「ここは病院だよ、君は事故にあってここに運ばれてきたんだ。君の名前は×××だ。どうだい?思い出せそうかい?」
自分の名前のはずのそれは、ただの言葉として宙を舞い、私の手元に落ちた。×××。そんな名前だったのか私は。
事故にあったと言われたが頭の鈍痛以外はどこも痛くないし、怪我をしている様子もない。本当に私は事故にあったのだろうか。
「あぁ、お医者さんを呼んでくるのを忘れていた。呼んでくるね」
そう言って君は立ち上がり、背を向けた。
何故かよくわからない不安に駆られた私は君の服の裾を掴んだ。振り返り微笑む君に謎の焦りを感じた。
愛しているよ。君を。君だけを。
一瞬だけ目を見開き、そして満足そうに笑う君。その笑顔に安堵し、裾から手を離す。
君は笑顔のまま椅子に座り直し、私の頬を撫でた。その手の温かさが心地よくて思わず目を細める。頬を撫でていた手は私の輪郭をなぞりながら首を触る。もう片方の手も首に伸びる。両方の手が首を掴み力がこもる。息ができなくなる。息が、息が。
息がしたくて首を掴んでいる腕を掴む、引き剥がそうとするがビクともしない。苦しい、息を、意識が、助けて。
「やっぱり君は僕が殺すべきだ。そうだ、僕が殺すべきなんだ。君を愛し、君に愛されている僕は君を殺す権利がある。そうだろう?愛してる、愛してるよ、ずっとずっと愛してる…」
君が何を言っているのか理解ができなかった。何も理解できないまま、私は意識を手放すしなかった。