採卵後、病室に戻り、
「このまましばらく休んでいてもらいますが、気分がマシになったらケータイとか触ってもらっても大丈夫ですからね」
と言われ、まあまあ体も動くのでポケットに手を入れたところ、スマホを触ろうにもロッカーの鍵がない。まだそこにいた看護師に伝えると探しに行ってくれ、その辺に落ちていたらしい鍵を拾って来てくれました。やっぱ手首のタグとかゴムとか身につけられる感じにしようよ……意識危うい人に自己管理とかできないってと思いつつ、そのままケータイと眼鏡まで出して枕元に置き、施錠して鍵を返してくれました……が、眠すぎて寝落ち。しばらく経って寒気で覚醒。あんまり寒いので思わずナースコールを押し、追加の毛布をおねだり。
2枚の毛布にくるまってどのくらい寝たか……次に来たのが胚培養士。
「卵の説明できそうですか」
と言われたけれど、来訪の気配で起きはしたものの頭が回らない。
「もう少し後でもいいですか」
と、一度お引き取りいただいてもう一度眠……ろうとしたところに尿意。話に来てくれた人を帰らせてしまったし眠気はあるし、と眠ろうと頑張る程にますます尿意。ダメだ、寝てられない、と思ったけれどまだ右腕に繋がれた点滴から何かはわからないけど液がポタポタ落ちている。ちなみに初点滴です。恐る恐るナースコールを押し、
「お手洗いに行ってきてもいいですか」
とお伺い。看護師がすぐ来てくれて、助けられながら体を起こすと強烈な目眩。
「大丈夫ですか」
「ふうっとします」
「今の点滴が全部入れば、そのふうっとするのはマシになるはずです。もう少しだから、だーっと落としたら5分くらいで終わるので、それまで我慢できますか」
と、言われても今既に漏れそうな尿意……5分は保たない。止むを得ず点滴の柱に縋り、反対の手で壁に縋りながらトイレまで連れて行ってもらい、ようやく人心地。どのドアかわからずトイレの前で迷子になって看護師に本当に大丈夫か心配されましたが、これはドアがいくつか並んでいたのと、眼鏡がなかったせいです……意識は大丈夫です、たぶん。
そこでようやく、不織布のパンツとナプキンを着けてもらっているのに気づきました。にしてもナプキンは綺麗なまま。出血するのが普通と聞いてたけど……と首を捻りながら用を済ませ、待っていてくれた看護師にベッドまで付き添ってもらうと、
「点滴の終わる頃また来ますから」
と、束の間の一人。
少し寝た頃、点滴も終わったらしく看護師再来訪。点滴を抜いてもらい、お手洗いに行ったときに全く気付かなかった、中に深々挿入されていたガーゼを抜いてもらい、
「血はそんなに出てないですね」
と言われて、ほっ。帰る準備をしながら胚培養士を待っているよう言われたので、着替えてからもう一度ベッドへ。不織布というパンツが増えていたので一瞬迷いましたが、上からトランクスを穿きました。まだ血が出るならトランクスにナプキンは止めたほうがいい、漏れると経験則。着替え終わってもまだ来そうにないのと、マシになったのかもしれないけど気分がいいわけでもないのでベッドにそのまま戻りごろごろ。自分のとき聞いた記憶ないけど、前の人が戻ったときに点滴に痛み止め入ってるとか言ってたのになんでこんなお腹痛いんだ。聞き漏らしでなく痛み止めは自分には入ってなかったのかとか思いながら。お土産に琥珀糖と野菜ジュースをいただきました。可愛らしいですね。
そうこうしているうちに胚培養士再来訪。いやもうホントにお手数おかけしてと体を起こそうとするものの、お構い無しに資料をこちらに向けながら説明が始まってしまったのでタイミングを逃し横になったまま拝聴。
採れたのが21個。自分が話を聞ける状態になく延期になっている間に全ての卵の処理が終わり、成熟卵20個と未成熟卵1個という結果に。
未成熟卵は人工的にホルモンに漬けて成熟を促すこともできるが、個数に関わらず10万プラス、また凍結精子が使えないので新しく精子が必要。かつそれでも受精できるかわからない。どうしますか……と、聞かれて、まず率直に20個手間のかからないものがあるにも関わらずひとつに10万……と、懐の痛さを感じ、そして命の選別をしたような罪悪感。ですが……迷いに迷った挙句、人一人殺した気持ちになりながら、処置はお断りしました。懐も痛いんですが、パートナーがいない状態ではこの卵のタイミングに合わせて別途精子を用意するってのも正直厳しい。精子提供を受けたとき、先方の都合のいい日を指定され、その日に仕事を調整して受け取りに行くって手段しか選べなかったので……
だから、20個の卵達に顕微授精をし、胚盤胞に育ったもののみ凍結するということになりました。未成熟卵に関しては自力で成熟することもあるので、他の卵達の処理が終わるまでは保管し、無理そうなら廃棄になるそうです。やはり人を殺したような罪悪感……とはいえ成熟卵だとしたって生理の度に生理用品とともにどのタイミングでか捨ててるといえばそうなんですけど。
しかもこれ、もし20個胚盤胞になったとして、自分に20回卵を戻すほど経済的余力はないわけで。いや肉体的にもないと思いますけど。っていうことはですよ、胚盤胞に育った大半は最終廃棄になる可能性すらあるわけで……いや、はじめの頃の診察で医師が受精卵になるのが約半分、うち胚盤胞になるのがさらに半分とか言ってたな。っていうことは胚盤胞は5個?
自分が産むとして、きょうだいっていいなとか寝言いったところでたぶん二人で限界です。でも受精卵って法的にはともかく、一応もう人じゃないですか。着床できるかとかそういう課題はあるにしても。それを廃棄にしたら卵の可能性の芽を摘むことになるけど、その決断って結局自分の胸先三寸で決まるってことでしょ。え、自分は少なくとも三人と未成熟卵殺した罪悪感を抱えて生きていくの?しんど……と、とてもブルーになりつつ……水子供養とかしようかな、気休めだろうけど。
今後のお金の試算(凍結できる数により変わるので試算です)と、お薬三種もらってふらふら帰りました。採卵前はやよい軒に行きたかったんですが食欲もなく。今日の会計自体は前納金より。試算の結果前納金を軽く20万ほどオーバーしていたのが気になりますが。
次回は4日後に自分の体の診察があります。それまで毎日、腹囲、体温、体重を記録するよう表を渡されました。……ところで家には体重計がない。買った方がいいのか聞くと、それなら体重は記録しなくていいと言われました。
卵達のことは気になるなら電話したら聞けるけど、病院からはとくに連絡することはないとのこと。
そりゃまあ気になリますけど。
とりあえず次回投稿は、自分に使用された薬を中心に、この採卵周期で何が行われていたのか(自分がいつでも見返せるようにしたいだけです)纏めます。