晩秋の風が吹く街に、旅の親子がやってきました。父親の車で親子二人の旅の途中です。

 走っている道路には標識がありません。駐車禁止も制限速度も見当たらない道です。

 しばらく走って行くと道端に一人の番人が立っていました。「何をしているんだろう」と思いましたが、車はそのまま通り過ぎました。

 またしばらく行くと、さっきとは違う番人が立っているのが見えました。番人は車に向かって「止まれ」の合図をしています。

 「どうかしましたか」と父親が尋ねると「スピード違反です」と答えが返ってきました。

 「前にいた番人は何も言わなかったのに」と父親は云いました。

 「他の人は関係ありません。私が違反だと思えば違反なのです」。番人からはこんな答えが返ってきたのです。

 やがて父親は違反の印を渡されて走り出しました。

 しばらくして子供が尋ねました。「お父さん、どうしてなの?」。

 父親は黙ってハンドルを握り続けました。