中野久夫著「現代芸術の光と影」・・・
中野久夫著「現代芸術の光と影」
異常心理学から見た作家と画家
昭和51年1月25日 発行
昭和55年9月25日 3刷
時事通信社刊
<目次>
I 芸術の影の部分
精神の異常
エディプス神話の現代性/作家と空想/コクトオとモオパッサン/精神分裂病と芸術
性の異常
サディズムとマゾヒズム/三島由紀夫の性倒錯/私小説とナルシシズム/高見順とマゾヒズム
/家畜人ヤプー
現代と異常
診断について/正常と異常のあいだ/現代に危機を反映する小説と絵画
芸術の精神病理学的な見方
想像と退行現象/芸術と神経症/ユングの”内向・外向”/クレッチュマーの”気質論”
/アラーズ・岩井の”欠損・倒錯・変容”/中野の”知覚水準による分類”/徳田の”精神医学的診断”
II 芸術家の栄光と悲惨
太宰治 ー 自虐と滅びの美学
太宰の人気の秘密・心的外傷/バビナール中毒と入院
ゴヤ ー 現代人の心を捉える虚無
病的な不安と恐怖/うつ病とのたたかい
星新一 ー 宇宙空間の自由と孤独
星氏の神経症/作品にみる神経症の痕跡/独創的芸術は自己破壊的である/星文学の特質
ドラクロワ ー 加虐傾向とその昇華
ドラクロワのサディズム傾向/ドラクロワと独身
志賀直哉 ー 小説の神様の凋落
谷崎、志賀、モオパッサン/志賀の資性の精神分析的解釈
セザンヌ ー 現代絵画の父と人間嫌い
白樺派とセザンヌ/セザンヌの私生活/分裂気質性芸術の源流
中井英夫 ー 漂泊の黒鳥
ポオ的な作品の構築/シャーマンとしての中井の技巧/黒鳥に象徴されるもの
フュスリとフリードリヒ ー 不安のなかの美
病的な絵画・不安な絵画/新古典主義の蔭に咲いたフュスリ/孤独な黒の画家フリードリヒ
/心の翳りの部分の探究
三島由紀夫 ー ナルシスの芸術と神話
太宰ー三島ー中井の系譜/ナルシシズムとパラノイア/三島自身の「ナルシシズム論」
/ナルシシズムとホモセックス
マネ ー 裸体画における不安
チチアーノの裸体とマネの裸体/リビドー的絵画は復活するか
倉橋由美子 ー 成熟拒否の世界
倉橋氏の性と政治と文学/カフカという穴
ムンクとクービン ー 死に憑かれた幻想画家
狂気の問題/色彩の世界と白黒の世界/ムンクの描画のテクニック/クービンの小説『対極』
参考文献
あとがき
索引
今から48年前に書かれたもので、いつ頃購入したのかも憶えていないし読んだのかどうかも記憶にないが少し前に本棚から取り出して、かなり長い時間をかけて読み終えたばかり。
ところどころで精神分裂病との記述があるが、ご存知の通り今では統合失調症の名称に、また躁鬱病は双極性障害に変わっていますね。
主に、日本の小説家の作品と外国の芸術家の絵画を題材にして、その芸術を生み出すうえで彼らの精神の異常性が深く関わっていることを精神分析論の立場から述べている。
文章がなかなか高尚で私には読みづらく感じたが、述べている内容は単純でわかりやすい。
フュスリ、フリードリヒ、チチアーノ、クービンなど、初めて聞く名前もありそこは勉強になった。
wikipediaで見ると、語学学習関係の著作も多いようです。
参考文献を見る限りでは、著者がどこで心理学や精神分析を学んだのかは不明。
取り上げている作家も今では古い印象を受けるので、この手の本は読む時期にも旬があるのかもしれない。