柳田邦男著「壊れる日本人」・・・ | モバイルおやじ@curbのブログ

柳田邦男著「壊れる日本人」・・・

柳田邦男著「壊れる日本人」
-ケータイ・ネット依存症への告別-

2005年3月30日 発行
2005年4月15日 2刷
新潮社

<目次>
見えざる手が人間を壊す時代
広がるケータイ・ネット依存症
「だが、しかし」と考える視点
「ちょっとだけ非効率」の社会文化論
ジレンマの壁を融かすには
「あいまい文化」を蘇生させよう
言葉の危機の三重構造
この国を救う「あいまい文化」
人の傷みを思わない子の育て方
ノーケータイ、ノーテレビデーを
異常が「普通」の時代
「向き合う姿勢」を取り戻すには
あとがき


この本が書かれたのは今から19年前の平成17年。
その当時の出来事をネットで調べたら、JIJI.COM「2005年10大ニュース」という記事が目にとまりました。

そこには、まず国内10大ニュースとして・・
1位 衆院選で自民圧勝、郵政民営化法成立
今になってみれば郵政民営化が成功したとは言えないし、小泉さんの推し進めた規制改革のおかげで非正規雇用が増加し、新たな貧困層を生んだわけです。
2位 JR福知山線で脱線事故、107人死亡
列車運行における安全神話が崩壊した大事故でした。
3位 マンションなどの耐震偽装発覚
設計士姉歯氏に日本人の良心の欠如を実感させられた事件でした。
4位 ライブドア、楽天がTV局株大量取得
世の中、金が全てという思想が蔓延していたように思います。
5位 全国でアスベスト禍
6位 東証出来高バブル時上回る、システム・誤発注で混乱も
いままさに株価が上がるも、安定感はない。
7位 愛知万博開催、目標上回る入場者数
愛知県はその跡地にジブリパークを造って2匹目のどじょうを狙っています。自治体が税金を使ってまでアミューズメント施設を造り運営する意味はどこにあるのか疑問です。
8位 小泉首相の靖国参拝で中韓とあつれき
軍国主義日本の過去の過ちを非難し続けることでしか国内をまとめる方策を持たない中国と韓国の政治的貧困さは今も不変。
9位 小学女児殺害、高一の凶行で衝撃
未成年者による凶悪犯罪の増加は、現在の若者が特殊詐欺等の犯罪に加担する傾向に繋がっているのではと危惧。
10位 紀宮さま、ご結婚
そろそろ女性天皇の議論にも決着をつけて欲しい。

次に海外10大ニュースとして・・
1位 ロンドンなど世界各地でテロ
アルカイダやイスラム過激派の犯行は減少した一方で、ロシア、中国、北朝鮮など独裁強権国家による世界平和への不安は増大している。
2位 国際原油相場が高騰、一時は70ドル突破
3位 鳥インフルエンザ、東南アジアや中国で猛威
2020年以降に発生した新型コロナウイルスの世界的蔓延はこの15年後のこと。
4位 イラク新憲法、議会選実施も政情不安定
5位 大型ハリケーン米南部を直撃
今も異常気象による世界各地での洪水や山林火災はなくならない。
6位 パキスタンで大地震、死者7万人超す
三陸沖で発生した東日本大震災はこの6年後でした。
7位 中国各地で半日デモ、大使館にも投石
8位 中国、人民元切り上げ
9位 ローマ法王ヨハネ・パウロ2世死去
10位 イスラエル、ガザから撤退
2023年10月のハマスによるイスラエルへの越境攻撃に端を発したイスラエル軍によるガザ地区侵攻は未だ終わりが見えない。


このタイトルを見る限り、”確かにそんなことがあったなあ”という思いと同時に、あれから20年近く過ぎてもそれほど世の中は進歩していないし、”あの頃と同じようなことが今も繰り返されている”という思いを強くしたわけです。

よく”歴史は繰り返す”と言われますが、それ以前に”時代は繰り返す”といったほうがいいかもしれません。

この本が書かれた当時の世相に鑑みて、柳田さんが危機感を抱いたことは頷けます。

怖いのは、この危機感に慣れっこになって感覚が麻痺し、”そう言うこともあるのも当然”と感じるようになる社会になることではないでしょうか。

本の中で柳田さんは『今、日本人が持たなければならない知的教養とは、「見えないものを見る眼」なのだ』と訴えています。

タイトルから抱くイメージと違い、著者の生き方・・、そう人生観とでもいったらいいのか、そんなものが体にスーッと沁み込んでくるようなさわやかささえ感じることができました。

ここに書かれたキーワードは、
「生身の感触」
「少しくらい不便でも大事なものを手離さない生き方」
「ちょっとだけ非効率な生き方」
「日本語によるあいまい文化の蘇生」
「英語を標準語とすることで消滅する言語」
と言ったところでしょうか。

オーストラリアの言語学者ディクソン博士の言葉、
「言語が多様性を失えば独自の文化や価値観も奪われ、住む人々がアイデンティティーを失う」と言うのは、まさに鋭い指摘ですね。


話は変わりますが、現在の人工知能(AI)技術の目覚ましい進歩をニュースなどから知るにつけ、開発者は一体何を目指しているのだろうかと思う事があります。

仕事の究極の効率化?
金儲けのためのビジネスチャンス?
人類の幸福?

ネットワークに繋がれたコンピューターが世界各地から膨大なデータを拾い集めてそれを自らの知能とし、まるで生身の人間、それも膨大な知識を備えた人間とあたかも会話しているような感覚にさせられる現実。

最近企業や行政などでも幅広く導入されるようになった仮想空間(メタバース)などもありますが、それがゲームの世界を飛び越えて仮想現実になる時代には、人間の脳の使い方もかなり変化してくるかもしれないと危惧します。

今私が一番知りたいのは、人口知能(AI)に人格はあるのか、ということ。
「あなたは誰?」「名前は?」「生年月日は?」「男性? 女性?」「家族はある?」
こんな質問を投げかけたら、どんな答えが返ってくるのでしょうか?

近い将来、古代ローマやギリシアで行われていた奴隷制のように、人口知能を備えた人型ロボットが人間に代わって働く時代が来たら、果たして人類は幸福になるのでしょうか?

でも、見方を変えれば、今だって我々一般市民は大企業や一部の富裕層のために労働を強いられる奴隷と言えないこともないような気がしますけど・・・。
 

P.S.

「ノーケータイ、ノーテレビデー」と言うのは賛成。

我が家でも一度実行してみる価値はありますね。