蔦に覆われた高台にある白壁の家。大人の背丈よりも高い擁壁に囲まれた立派なお屋敷。


自転車で駅まで向かう途中にある。


わたしの通学路、ケンケンパをする女の子、家の中から聞こえるピアノの音色。高台にあるから夕焼けがよく見える。ピアノの音が止み、家の中にから出てきて、軒先から道路で遊ぶ女の子に声を掛けるおばあさん。日も暮れて、街灯が点き始めた頃に帰宅するスーツ姿の男性。


暑い夏、家の中からピアノの音が聞こえる。ある日を境に、通路で遊ぶ女の子を見なくなった。夕暮れどきには、スーツ姿の男性が足早に帰宅する。



木枯らし吹く秋の休日、ピアノの音もしばらく聴いていない事に気が付いた。陽落ちが早くなり、街灯が煌めく。夜、お弁当屋さんのビニール袋を片手に帰宅する男性の姿を見るようになった。


大忙しの師走、いつも通る白壁の家は蔦に覆われ始めていた。


春になり、わたしは就職し、生まれ育ったこの地を離れた。あれから何年経っただろうか。白壁の家は、全面蔦に覆われていた。


道路に目をやると、地面には幾つか輪っかが描かれていた。ピアノの音色も聞こえてくるようだった。


今は誰もいない、蔦に覆われた白壁の家。


Life is a Great Journey