話題作
『春、死なん』紗倉 まな



クチコミレビューです。
一部ネタバレを含みます。

現役人気AV女優が描く「老人の性」と「母の性」――、濃密な文章で綴られた衝撃作!

「春、死なん」
妻を亡くしたばかりの70歳の富雄。理想的なはずの二世帯住宅での暮らしは孤独で、何かを埋めるようにひとり自室で自慰行為を繰り返す日々。そんな折、学生時代に一度だけ関係を持った女性と再会し……。

「ははばなれ」
実母と夫と共に、早くに亡くなった実父の墓参りに向かったコヨミ。専業主婦で子供もまだなく、何事にも一歩踏み出せない。久しぶりに実家に立ち寄ると、そこには母の恋人だという不審な男が……。

人は恋い、性に焦がれる――いくら年を重ねても。揺れ動く心と体を赤裸々に、愛をこめて描く鮮烈な小説集。

ボリュームとしては、一時間弱で読めるボリュームです。

登場人物にはいりこむってことはなかったから、壁になって冷静に、すごーく賢いかたが書いた小説だなーって感じながら読めました。
登場人物一人一人の背景とか個性がしっかり書かれてて、「うんうん」って思いながら読みすすめる。

自分に与えられた良き母とか、良き父や祖父の枠にはめこまれることの窮屈さや闇、無神経な夫、ただ耐えるだけではない嫁。
二世帯だからこその孤独。

AV女優さんが書いたんだなというのは、人妻ものavはうら若い娘が所作や設定、化粧をそう見せかけてるだけであるってとことかにしか私は感じられませんでした。
ラブホとは別世界に入るということに意味がある、とか、70は一回戦するのも命がけ、、、。

他人には本人の贅沢はわからない

は深いって思いました。。。

主人公の妻は二世帯になってから心病むんだけど、息子からの
「母さんは贅沢だな」
で、さらに病むのです。
可愛い孫がいて、しっかりものの嫁がいて、息子もいる。
傍目には贅沢でも、気遣いやさんで真面目で几帳面な彼女は嫁への気遣いやいつまでも自立しない息子から逃れて、遠方で夫婦で過ごすほうが幸せだったし、贅沢だったんだろうなぁ、、、って切なくなりました。

読んだあと、誰かと内容について語りたくなるそんな一冊です。