あたし、実はてんかん発作もちなの。だから昨日も風が強かったからあんまりいい感じしなかったんだ。そしたらやっぱり発作起こしちゃった。

それにね、おにいちゃんもなんか変なの。
あたしが発作起こす直前に、思う様にコトが運ばなかったからなのかイライラ。
それからあたし逃げてたの。

注射打ったりしたからまだフラフラで、あたしはまだ本調子じゃないんだけど、おにいちゃんはもっとひどい状態みたいよ。

だれからも必要とされていない、生きていても迷惑をかけるだけ、って思ってるの。
いやよね。そうやってネガティブになるのって。

発作起こした後、おちついたら、フラフラでもあたしは愛想振りまいたりするのよ。
昨日、おにいちゃんはあたしに「健気だね」って言ってくれたけど、おにいちゃんこそそうならなきゃ。

でも、パパにも必要とされていない、自分がすべて悪い。何もかも原因が自分、って思っているのよ。自分がいなくなって、最小限の迷惑で
これ以上起こりうる迷惑を比べたら、絶対にいない方がいい、だって。ものすごい心、決めてるわ。

あたし、どうしていいのかわからない。
変なのはよくわかる。だからどうしよう。
あたしも、おにいちゃんも知っているの。

パパはもっと深い問題を抱えている事。

お酒を毎晩飲みに行き、朝になるまで帰って来ない。
誰かの家に泊まって帰って来ている事。

でもね、それをあたし達はわざと言わないの。
俗にいう浮気、ってやつ?

でも、浮気だ、ってすら思わないわ。

そんな罪悪感があったらあたし達に見せる顔ないじゃない。

あたし達が心のどっかで必要で、他の人が違う心のどっかで必要とされてるのよね。
わざと、言わないことの優しさ。
自分の家、って思っているだけで良いのよね。

そう言い聞かせている。

あたし達も自分たちの気持ちにうそをついている、って事を否定しているのかもしれない。
傷つきたくないから?
失いたくないから?

ちがうの。
そんなところで虚勢をはるのはいやなだけなの。

だって、勝ち負けで考えたら、あたし達の方が勝ち。

間違った事してないもん。

だから、間違いを犯した人は自ら過ちを認めるまでは何もしないし、何も出来ない、って悟ったの。

おにいちゃんもいろんな過ちを犯して来たわ。今でもそうよ。
あたしもね。

でも、それを潔く認める。謝る。反省する。
それは出来る限りやろうと思っているわ。

だからこそ、真正面から言わない。
それも優しさかもしれないし、もしかしたら残酷な事なのかもしれないわ。
パパがおにいちゃんに言った事。
「甲斐性無いから」

本心は鬱だから、ってことだって後にわかったんだけど。

おにいちゃんはそんな事どうでもよかったの。
心を裸にしてぶつけ合うことができればいいの。あたしと同じよ。

でもね、おにいちゃんが思う事。
「甲斐性がないんじゃなくて、不甲斐ない」

片付けろ、と言われておにいちゃんは片付ける。でもパパのものはどんどんたまるばかり。
それを片付け始めるまで半年かかるとか。

何かの行動にうつさなければならない時に、なんにも行動しない。
本当に必要な事なのに何も進歩が無い。

大事な事なのに言わない。

意見を求めても「わからない」とか「いいんじゃない?」だけ。

一緒に前を向いて歩いていくのなら何か行動を起こさなきゃ。

あたしでさえ「お散歩の時間よ!起きて!」とか、「もっと遊んでよー」とか自己主張するわよ。

何も言わない事が包容力じゃない。優しさじゃない。
単なる逃げなだけ。

不甲斐ない、って事。
リング。
マリッジリング、エンゲージメントリングにファッションリング。
おしゃれよね。

「コックリングに惹かれたんだ」って。
なにそれ?

「本来は男性性器が固い状態を持続させるためにシリコンやゴム、金属製の輪を性器の根元に装着して血流を一定量止めるもの。長時間するとうっ血することがあるから本来は30分程度が適切な装着限界時間。」

「ゲイの世界では装飾品としても扱われている。もちろん、興奮の材料となる性器がより固く大きく見える効果がある事も一因だが、肌や陰毛のなかから見える異質なものがエロチシズムを増大する、と考える人も多くいる。そして、自身の性器の感覚も若干増大するために、興奮を覚える人も多い。」

あたしにはさっぱりわからないわ。
でもね、趣味ってことらしいの。ざっくり言うと。

一本だけなら普通。
二本してたらちょっと興奮。
三本目であら、いやん。
それ以上だと「変態」なんですって。

パパとおにいちゃんはエッチな事が目的で再度あう約束したの。
エッチな事するにあたって、この「変態」って所は外せなかったらしいわ。

どん欲かどうか、だって。

あたしも遊びとご飯にはどん欲だけど、そういうことなのね。

無我夢中になれるかどうかってことよ。

リングをする事でいろんな効果があると思うの。
結婚してます。婚約してます。お金持ってます。おしゃれに気を使ってます。とかね。
ゲイの世界も同じ様に効果があるのね。

同じ趣味で魅かれていったわけなんだ。
雨。
お散歩出来ないからあたし、嫌い。

パパも嫌いみたい。

雨の日はいっつも具合が悪いの。

あたしもその影響を受けるからかしら。あんまり動きたくないの。
寝て過ごすの。

パパがどこかへ旅行に行く時、パパはものすごく浮き足立つ、っていうかうきうきする、っていうか。

そうすると、あたしもどっかに行けるんじゃ無いかっておもっちゃうの。
だからあたしもうきうき、興奮しちゃうのね。

そうなの。
あたし、パパの気持ちとものすごくシンクロしちゃうの。

ところがね、おにいちゃんとは、っていうと気持ちのシンクロは無いの。
どっちかって言うと、おにいちゃんの反対の気持ち。

興奮してる時は落ち着いてるのよ。お互いにね。

おにいちゃんが泣いている時はあたしが面倒見てるのよ。
あたしが怖がってたり、いやがっている時はおにいちゃんが面倒見てくれる。

でもね、行動とかはそっくり。
振り向く瞬間、止まるタイミング、げっぷ、おなら、あくび。

あたし、肝機能があんまり良くないし、興奮が激しいから、おにいちゃんのすすめで漢方始めたの。
そしたらね、おにいちゃんもついでに始めた漢方薬と全く同じもの処方されたわ。


まあ、こんなに同じ瞬間に同じことをするなんて、そして同じお薬が出るなんて、兄弟っていうより双子なんじゃないかしら、って思うくらいよ。

おにいちゃんはあたし達の事、「チーム短足」ってよぶんだけど、失礼よね。

じゃあ、パパとおにいちゃんは?

鬱。

あたしと出会った時にはおにいちゃんに症状が出始めてたのよ。
おそらくそれより前からあったんでしょうけど、どんどん悪くなっていったの。

人と会うのが怖くなった、って。

パパは親から捨てられた様な環境。それでおばあさまに育ててもらったから、親を憎んで生きて来たの。
複雑な環境の中でも自分がしっかりしなきゃ、って兄弟を引っ張っていこうとがんばった。

でも、おばあさまが亡くなって、存在価値を見失った、ってことから鬱にどんどん落ちていったんですって。

がんばった。でもその意義や理由がわからなくなったとき。
それを支えたり、助けてくれる人がいれば大丈夫だとおにいちゃんも思ったらしいけど、そう簡単ではなかったのね。

拒否。

あたしも雨だからお散歩拒否することあるけど、差し出された手をはねのけちゃう。

そうするとどんどん深みにはまっていっちゃうんだわ。

そして、周りとのつながりをどんどん断ち切っていくの。

あたし、実はむかし仲の良かったワンコ仲間が苦手になったの。
しばらくあっていないうちに怖くなっちゃったのよ。

でも、自分が優位だと思うと大丈夫。

相手が下じゃないとだめなの?

そう。結局ね、自分の自信。それがないし、自分が優位だと見せる事で虚勢をはっているだけなのよね。
それをわかっているんだけど、あたし達家族みんな、なおせないの。

本当の意味での自信を積み重ねないとだめなのに。わかっているのにね。