今年に入ってすぐ、お世話になった方が急逝しました。

あまりにもショックが大きくて、どのように文章にしたらよいかが分かりませんでした。

溢れる感情の前には、どんなに気の効いた言葉も無力な時があるのです。



私は証券アナリストの資格を持っていますが、その方と出会わなかったら、株式や投資信託そのものや、確定拠出年金制度やNISA制度について、興味を持つこともなかったかもしれません。


教員だった私の両親は左翼的な人々で、お金を稼ぐことに対してネガティブな印象しか持っていませんでした。

10年前に父が亡くなり、相続の手続きをする中で、母にはほとんどお金の知識がないことに愕然としました。


その頃は六本木で行われていたコツコツ投資家がコツコツ集まる夕べに、1人の知り合いもないまま参加し、投資についての知識を積み重ねてきました。


その方は、共著ではなく自分だけで書いた本を初出版したばかりで、初めて会った時に見せてくださいました。

確定拠出年金に関する本でした。


10年前は多くの企業で確定拠出年金導入の機運が高まっており、いち早く導入した親会社では不人気ではあったものの、勤務先で導入するのは時間の問題でした。

確定拠出年金制度が不人気な理由は、自分で商品を選び、リスクを取って運用しないといけない点に尽きます。


私は、勤務先で企業型確定拠出年金制度の導入の話が出る前から、準備することができました。

その方には本当に感謝しています。


企業型確定拠出年金のアカウントのデフォルト設定は定期預金で、ほとんどリターンはありません。

私は開始前に商品を吟味し、インデックスファンド4種類を選びました。

「オルカン」の愛称で知られる全世界の株式に投資する投信の企業型DCなどで、複利で年率10%近いリターンを稼ぎ出しています。


その方はお金の話だけでなく、定年後の生き方についても全国に出かけてセミナーを行っていました。

生来書くことが好きで、著書もゴーストライターを使わずに膨大な数を出版し、複数のコラムも連載していました。


また、仕事一辺倒のひとではなく、現役時代に単身赴任した京都についての造詣が深く、京都検定一級ホルダーでした。

その方が引率し、何人かのグループで一緒に京都を旅したこともありましたよ。


昨年6月のリアルセミナー、8月のオンラインセミナーを受講したのが最後となりました。

フィンランドへ行く前に、成田空港でオンラインセミナーを拝聴したことを、今でも思い出します。


その直後に病気が発覚し入院、厳しい抗がん剤治療に耐えて、自宅へ戻ったと聞いたのは11月のこと。

12月には参加するコミュニティでの忘年会に、奥様が収録した動画のメッセージを送ってきました。

必ず回復して、またお会いしましょうと。


お別れの会には参列しましたが、今も信じられません。

ご冥福をお祈りしています。