Fukuoka Art Next (FAN) というプロジェクトがあり、福岡市としてアートを推奨している。毎年秋にFANウィークというイベントがあり、今年は9月16日から10月22日まで、美術館、ギャラリー、舞鶴公園、福岡城跡などで様々なエキジビションが行われている。

そのうちのひとつで福岡市美術館で行われているコレクターズ展に行ってみた。市主催の展示会なので、入場料200円でこの特別展に加えて定期的に入れ替わる常設コレクションの展示も一緒に見れるとてもお得なもの。3人のコレクター(建築家、CEO、宮司)のそれぞれのコレクションから一部の作品群を展示してあった。宮司は太宰府天満宮の宮司 西高辻󠄀 信宏 氏で、海外のアーティストによる作品など中々楽しめるものがあった。そして、天満宮の境内に10作品くらいを展示していることを知ったのだ。また、宝物館で宝満山の特別展示が行われていることも知り、本殿修復中にお詣りする所として造られた仮殿も見に行きたいと思っていたため、思い立って大宰府を訪れることにした。

 

太宰府と言えば太宰府天満宮しか知らない。だけど、歴史も手伝って実は中々奥深い。かねてから友人に薦められていきたいと思っていた宝満山の麓にある竈門神社(大宰府駅からバスで10分くらい)をまずは訪れることにした。

 

太宰府の霊峰宝満山は、古くから神々が宿る山として崇められ、現在は福岡県でもっとも登山者が多いくらい人気の山らしい。標高829.6m、急斜面が続く険しい山で気軽に登山できる山ではない。竈門神社は、山頂に上宮があり、麓に下宮がある。登山の準備はなかったので、下宮でお詣りした。インバウンドの観光客大賑わいの太宰府天満宮とは違い、こじんまりしていて、とても静かで落ち着く神社だった。上宮も訪れることができたら、さらに敬虔かつ清々しい気持ちになれるような気がする。

 

雲に隠れる宝満山と竈門神社の鳥居

 

竈門神社の本殿

 

竈門神社からの見晴らし

 

朝方曇っていたので、そこまで暑くならないことを期待していたが、途中から太陽が出てきて暑い日差しにやられながら、再びバスで大宰府駅に戻った。宝物館で涼みがてら宝満山の展示を鑑賞することにした。

発掘品や奉納品などの展示のほかに、宝満山の四季折々の表情をとらえた写真の数々があり、季節の折に訪れるのもいいかもしれないと思った。(けれど昨今の異常気象で樹々が美しく色づく前に枯れてしまうこともあり、本当に四季が薄れてしまいつつある現状が残念である。)

 

宝物殿を後にして軽く昼食をとりデザートに梅が枝餅を楽しんでから、団体客が減り始めた大宰府天満宮に足を運んだ。

 

124年ぶりに3年をかけて行う本殿の大改修が始まっている。3年間という期限付きの仮殿自体かなり話題性のある作りになっている。建築家の藤本壮介氏率いる藤本壮介建築設計事務所(東京・江東)によるデザインと設計。

「太宰府天満宮の周辺に広がる豊かな自然が御本殿前に飛翔し、屋根に森が現れるというコンセプト。お椀(わん)のような曲面の屋根に植物を載せるという大胆な仮殿になった。屋根の曲面がそのまま、仮殿内部の天井の曲面にもなっている。構造は鉄骨造で、平屋建てだ。」(日経クロステック2023.05.15記事より)

 

ちょっと意表を突く印象。屋根の上にしっかり森がある感じ。

後ろに控える本殿は足場に覆われてすっかり工事現場と化していた。

 

太宰府天満宮仮殿と本殿工事現場(右下)

 

仮殿でお詣りした後に、案内所でもらったアートマップを手に境内のアート巡り。

強い日差しを日傘で避けつつ、迷って行ったり来たりしながら半分くらいの作品に出合うことができた。コレクターズ展でも紹介されていたサイモン・フジワラ(日本人の父親とイギリス人の母親を両親にもち、異なる文化・社会のあいだで揺れ動く自身のアイデンティティを題材とする)とライアン・ガンダー(ロンドンとサフォークを拠点に活動し、美術作品や普段の生活で遭遇する物事を素材に多彩な表現手段を用いる)の作品が見つけやすい場所にあった。

 

太宰府天満宮境内美術館に点在する作品の一部

 

お詣りとアート鑑賞の一日。天神から30分で行けるアクセスのよい観光名所。

また訪れて、見損ねた境内アートも見たいし、今度は天満宮のすぐそばにある九州国立博物館も訪れてみたい。