受験も学費もない。単にオンライン登録するだけで参加できる学びの場コミュニティ、福岡テンジン大学。街全体がキャンパス。毎月第4土曜日に、いくつかの授業がボランティアスタッフによって企画・開催されている。行政や企業とのコラボ企画もあるらしい。
ネットサーフィング中にテン大のホームページに巡り合い、福岡の情報に加えて人やコミュニティとの繋がりに飢えている私は、早速入学してみた。
先日、天神ビッグバン街歩きという授業に参加してきた。参加者との交流が一番の目的だが、天神ビッグバンで天神の街がどのように変わるのかも興味があった。何より福岡テンジン大学なるものがどのようなコミュニティなのかも関心があった。そのうち自分もスタッフになって何か企画しちゃおうかな〜なんて軽く思いながら。
学長である岩永真一さんはユニークな経歴の持ち主。就職氷河期に内定ゼロで卒業、バイト、会社員を数年経験して、27歳で独立、福岡テンジン大学を設立したそうだ。以来ずっとフリーランスで仕事をしていて、現在の肩書は「関係デザイナー/ファシリテーター」だ。生まれも育ちも社会人になってからもずっと福岡である彼は、福岡という街に恩返しをしたいと活動している。
「自分の生活・仕事・人生・地域やまちを、自分事として捉えて行動したり、営みをつくっていく人が増えていくといいな~」と思っているのだそう。
福岡はおもしろい街だと思う。適度に都会で、おしゃれ。コンパクトで徒歩での行動に向いている。人は優しくて人懐こい。福岡市民のひとりとして、いろんな人やコミュニティと繋がり、街をより魅力的で居心地良い場所にしていけたら素敵だなぁと思う。
とりあえず、岩永さんのブログを読んだり動画を見たりして、少しは福岡の現状を知ることができた気がしているので、以下にまとめてみる。
福岡市は人口160万人の政令都市で、現在も人口が増え続けている。
天神ビッグバンや博多コネクティッドなどのプロジェクトが進められていて、福岡Nextと称して「人と環境と都市活力の調和がとれたアジアのリーダー都市」を目指して次のステージへと飛躍するための様々なチャレンジも推し進められている。
元気でエネルギッシュな街という印象が強い。
そんな福岡だが、福岡市在住10年未満の人たちが人口の50%を占める。在住歴20年以上という人たちは人口の2割に満たない。
なのに、福岡市民は福岡が大好き。福岡市の調査によると人口の97%が福岡が好きと回答している。福岡市民も県外の人々も口をそろえて福岡は住みやすいところ、いいところと評する。
過去に三菱UFJコンサルティングが行った調査では、市民プライドランキングのほぼすべての項目(愛着、誇り、友人・知人へのお勧め度など)において1位に輝いたのが福岡だったそうだ。
人の入れ替わりが激しい。福岡市7区の平均では5年で4割の人が入れ替わっている。
一見ひとのつながりが希薄な印象なのに、なぜみんなそんなに福岡に愛着を持つのか。
全国屈指の集合住宅比率(中央区、博多区では住宅の9割を占める)で、西日本鉄道を中心に交通網が発達しており天神・博多という2大中心街へのアクセスがよく、日々100万人が行き来する。岩永さんの考察によると、まるで田舎に暮らしているかのように知人に出くわす、けれど田舎とは違ってお互いに相手の生活はよく見えない。そんな物理的・心理的人間関係の距離の絶妙なバランスが、暮らしやすさに繋がり愛着となっているのではないかと言うのだ。
なるほど。心地よさを感じている一人として興味深い。
ただ、反面課題も抱えている。岩永さんは市民の多くは仮住まいの意識が強いのではないかと言う。そして、それは福岡が消費するのに最適化された街だからではないか。そこには自分の街という感覚が乏しく、このままでいいという無意識があるのではないかとも。
福岡市民の不満に、市民のマナーの悪さ、犯罪数の多さ、就業機会の少なさがあげられるそうだ。なんと、中央区と博多区の犯罪率は全国トップクラス、しかも女性が狙われるというかなりショッキングな事実もある。
残念なデータはほかにもある。男女の役割意識(男尊女卑につながる)がとても強く、九州ではトップ、全国では4位に輝くという不名誉。人口妊娠中絶率と性犯罪率も全国で2位。
まったく印象とは異なる福岡の一面が見えてきた。
「自分の生活・仕事・人生・地域やまちを、自分事として捉えて行動したり、営みをつくっていく人」を増やしたいという岩永さんの願望も理解できる。
福岡に終の棲家を持つつもりである私としても、いい意味で健全な人間関係を育めるコミュニティを目指したい。そのために何かできることがあるといいと思う。
「共鳴する生き方」はひとつの目指したい姿だ。自分にできることからやってみよう。
楽水園

