憂鬱だったテストが終わって誘われた打ち上げ。
無愛想で付き合いの悪い私。
いつもだったら断わっていたのに・・・
『お前がいないと俺がつまらない』
あいつのせいだ。
あんなこと言われたら・・・奇跡を妄想してしまう。
あいつといると素直になれない。自分を誤魔化そうとする。
問題点があるとするなら・・・あいつといることなんだ。
「佐伯さんがこういうの来るの珍しいよね!」
「ほんとだよねー!何か歌ってよ!」
打ち上げはカラオケだった。
私はカラオケなんてほとんど行ったことがなかったし、数回行った時も歌なんて歌った事がなかった。
あたふたしながら「わ、私は歌とかあんま歌ったことないし、みんなのを聞いてるよ!」
クラスメイトの歌声が響く中、聞こえるように精一杯声を張り上げた。
「えー!?きこえなーい!
ハイ!リモコン!」
そう言って強引にリモコンを押しつけてくるクラスメイト。
(どうしよう!どうしよう!)
操作の仕方すらよくわからないリモコンを握りしめながら焦り、固まる。
「佐伯さん何歌うのかなぁ?楽しみー!」
「ねー!早く入れないと歌終わっちゃうよ!」
悪意はないのだろうが、クラスメイトの言葉が私を追い詰める。
そこへ・・・。
「おいおい!察してやろうよ!
こいつ・・・めっちゃ音痴なんだよ!」
「な・・・!」
あいつが・・・私とクラスメイトとの間を割る様に体を挟みこんできた。
「そ、そんなことないわよ!」
私はカーッとなって思わず反論していた。
「ほー。じゃあ歌ってみる?
やめとけやめとけ。皆にばれちゃうぞ?
俺がかわりに歌ってやっから!」
そう言って私の手からリモコンを奪った。
「何よ白井ー!私らは佐伯さんの歌が聞きたいの!」
「まぁまぁ。いいからいいから!」
そう言い終わった時には素早い操作で目当ての曲を入れ終わっていた。
「・・・。」
前の友人が歌い終わり、白井の曲が始まる。
歌いだした白井の声はとても綺麗で、その横顔は・・・かっこよかった。
(うまいなぁ・・・。さっき、私を庇ってくれたのかな・・・。)
曲が間奏に入った時、私は呟いた。
「・・・ありがと。」
騒がしい室内で聞こえるわけのない呟き。
ぽんっと肩を叩かれた。
視線を向けるとすぐ隣にいる白井と目が合った。
ずるい。
バカで・・・大バカなのに・・・やさしい。
あんたとの関係が壊れるのが嫌で、隠してきたのに。
隠しても隠しても・・・出てきちゃう。
仕方ないじゃない・・・好きになっちゃったんだもん。
なんで目が合うだけでこんなにドキドキするの?
そんなのわからない。
気付いたら目で追ってる・・・なんでこいつなの?
あんたの一言で私の日常が一変する。
胸の高鳴りが止まらないのよ?あり得ない・・・。
結局終りの時間がくるまで、ずっと私の隣に座っていたあいつ。
外へ出るともう真っ暗になっていた。
「あ、俺こいつと帰り道一緒だから送ってく。
おまえらも女子達送ってやれよ。」
「な!?冗談でしょ!?」
「いや。本気だぞ。」
私の顔はみるみるうちに真っ赤に染まっていく。
「なんだよ、白井って佐伯さんのこと狙ってんのか?」
「えー!まじで!?」
途端に色めき立つ。
「はっは!言ってろ!
もう暗くて危ねーから送ってくだけだっつーの!
じゃーな!」
「行こうぜ。」
そう言って白井はさっさと歩きだしていく。
「ちょ!ちょっと待ってよ!
あ・・・今日は誘ってくれてありがとう!
それじゃあね!」
クラスメイト達にぺこっと頭を下げて逃げるように白井の後を追いかけた。
しばらく白井の後を黙ってついて歩く。
白井も黙ったまま歩き続ける。
何なの!?このドキドキは。
私の平凡な日々はどいこにいったの?
・・・苦しいよ。
これが・・・『恋』なの?
苦しくて、私は俯き歩く。
なんでだろう。涙がでそう。
「なぁ!」
突然声をかけられて、心臓が一気に跳ね上がる。
「な、なに!?」
「空。見てみろよ。
星がすげー!」
白井はいつの間にか立ち止まって空を仰いでいた。
「え・・・」
言われて私も空を見上げる。
「わぁ・・・」
「な!綺麗だろ?」
「・・・うん!」
空を埋め尽くすように輝く星々は、まるで二人きりのこの状況を見事に演出してくれているかのようで
、なんだかとてもメルヘンなシチュエーションだと感じた。
「佐伯。」
呼ばれて空を見上げていた視線を落とし、白井に向けた。
「好きだ。」
暗くて彼の表情まではわからなかったが、白井の目はキラキラと輝いていた。
あぁ。問題点なんてなんにもないんだ。
私は・・・あんたがいいから。
「私も。私も・・・白井が好き。」
twinkle。
今、私の目もキラキラと輝いていると思う。
大空にまたたくあの星たちのように。